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アンプに問われる能力の第一は、つながれるスピーカーの再現性能を最大限に引き出すこと、そしてなるべく自分の能力は表に出さないことだと前回ラックスマンの項でいった。「まるで気難しい女王のようなスピーカーを、わが身を捨て一身を賭して晴れ舞台に立たせ、喝采を浴びさせる」という前回のアンプの美学を復唱してみると、なかなか、カッコイイ。しかし人間だったら、最近はこんな役回りはあまり受けないだろう。アンプだって、そうそうスピーカーのワガママに付き合ってばかりもいられない、と本音をもらすことだってあるのではないか。そう、思われた方もきっと多いことだろう。
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そこで、今回の「99シリーズ」のクオードアンプを、前々回の本欄で紹介した、フォーカルJMラボのスピーカー「CHORUS 816V」につないで聴いてみた。これはお買い得価格の製品だが、スピーカー総合メーカーの高い実績の上に作られたスピーカーなので、信頼性が高い。そして、フランス製のスピーカーをイギリスの老舗メーカー製のアンプでドライブするというのも興味深いのではないかと思った。
何曲か聴き進んで、こんな印象を受けた。このクオードのアンプは見かけは小型で、ファッショナブルな装いをしているが、オーディオ的にはなかなか骨のある鳴りっぷりを聴かせる。「CHORUS 816V」の健康的で明快な再現性はキッチリと引き出すのだが、同時に、しっとりとした語り口で全体を包み込むような鳴りかたになる。穏やかな肌触りの音だがニュアンス豊かに音楽を歌う。そうか、このアンプには表にシャシャリ出て、私がこのスピーカーを鳴らしているんでございます、という下品なずうずうしさはないが、スピーカーのもつ再現力を一定レベルで引き出しさえすればいい、とおとなしく引き下がっているわけでもない。ほんのわずかだが、自分の側にスピーカーを引き寄せて、やんわりと自分の意見もある程度飲ます、そんなイメージである。
これは、音楽の再現性に自信があるからこそできることだ。ナマの音楽を数多く聴き、その場にあるオリジナルな音に肉迫して(the closest approach to the original sound)、音楽のイメージを忠実に再現することを求め続け、感覚を鍛えてきたことによって初めて得られる、確かな“自信”に裏づけられた再生力である。それは高いレベルの音楽的感性といってもいい、そういう能力をクオードが備えているからこそできるワザなのだ。
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| パワーアンプ「「909 Stereo Power Amplifier Classique」の内部 |
この再現性を支えるオーディオ技術については、まだ十分な資料が得られず、詳細に言及することはできないが、特にクローズアップする斬新で画期的なテクノロジーがあるようには感じられない。パワーアンプで公表されている「カレントダンピング回路」の説明も、AB級増幅の原理とメリットの従来型解説を大きく超えるものとは思えない。
「フィードバックに加えてフィードフォワードを採用した歪改善技術」についても特に目新しいものではない。今回のクオードの成功の要因は、むしろ成熟した技術を最適に使いこなしているところにこそあるのではないかと思う。
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| クオード・リンクにより、このリモコンで99シリーズの製品をコントロールできる |
これは、オーディオのコメントとしては日本では受けないかもしれないが、ごく当たり前のテクニックで、他社にはできない豊かな再現力を得ることこそ、オーディオ本来の技術ではないだろうか。ヨーロッパでも一部のメーカーの製品には、目をみはるような物量投入、最新技術導入型もあり、それにはそれの良さがあるのだが、いい音で音楽をじっくり味わいたい、という音楽・オーディオファンにとっては、クオードのような物づくりをするメーカーの存在はじつにありがたいのである。
なおクオードの「99シリーズ」には、あらたに「クオード・リンク」が採用されているので、シリーズの製品でシステムを組むと、一つのリモコンで、すべての機器をコントロールできる。まあ、これもDVDと大型ディスプレー時代の真っ只中にいる私たちにとっては、格別に目新しいことではないが、ミニコンやAV環境ではなく、再生クオリティを劣化することなくピュアオーディオに持ち込んだのは評価できるだろう。






