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| フォーカルJMラボのスピーカーに接続された、クオード99シリーズのアンプとプレーヤー |
アンプの役割なんて簡単そうだが、少し調べてみると意外にわかりにくいことも多く、いざ選ぶときには苦労するものだ。しかも、ハイファイオーディオで“いい音”を目指すと、アンプはどうしても重厚長大、高価なものに目がいってしまうのも悩みの種である。そんな事情のなかで、前回は妥当な価格で、しかも高級機の名に恥じないアンプの代表例として、日本の老舗メーカー、ラックスマンのセパレートアンプ「C-600f」「M-600A」を紹介したのであった。今月は、同じように実際購入検討範囲妥当価格にして、高性能なアンプを紹介したい。イギリスの老舗、クオード(QUAD)の最新「99シリーズ」アンプである。
クオードというと、あの静電型(コンデンサー)スピーカー「ESL」の印象が強いが、実はプロ用のアンプメーカーがそもそもの始まりであった。1936年、ピーター・ウォーカーがロンドンに設立し、社名は「ジ・アコースティカル・マニュファクチャリング・カンパニー」といった。QUADは製品のブランド名で、「Quarity Unit Amplifier Domestic」の頭文字からとったそうだから、文字通り国内(イギリス)向けアンプメーカーとしてスタートを切ったわけである。なお、現在の社名は「QAUD」を生かして、Quad Electroacoustics Ltd. となっている。そして、同社のトップページには、次のようなメッセージが書かれている。
…we are proud of ensuring the philosophy of our founder, Peter Walker, remains consistent - to produce '...the closest approach to the original sound.'
クオードが守り続けている、オリジナルサウンドにもっとも近いアプローチ、という創業者ピーター・ウォーカーの製品作りの基本姿勢だが、これは日本でかつて使われた“原音再生”という珍妙な表現とはちょっと意味合いが違う。オーディオでは絶対に元の楽器なり声なりと同じ音は出せないのだから、その元の音を十分に聴きこんで、その音が与えるイメージに限りなく近いイメージを再現しよう、ということが真意なのである。
少し詳しく調べてみると、創業時の同社はトランスの製造から始めたのだそうだ。 これは前回のラックスマンとまったく同じ、奇遇である。半世紀をはるかに超える社歴も共通しているし、少し不思議な符合を感じる。
アンプの第1号機は、ラックマウントタイプの大型で、1938年に発表された。しかしちょうど、第2次世界大戦前夜という時期に遭遇し、本拠地をロンドンから北のハンティンドンに移すなどして製造は中断された。戦後1949年に発売した、プリメインアンプ「QA12/P」が本格的なクオードアンプの第1号機ということになる。そして、セパレートアンプは1951年の「QUAD I プリアンプ/QUAD I パワーアンプ」が最初のモデルである。
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| プリアンプ「99 Pre-Amplifier Classique」 |
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| パワーアンプ「909 Stereo Power Amplifier Classique」 |
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| CDプレーヤー「99 CD-S Classique」 |
さて、今回のアンプは「99シリーズ」という製品群(CDプレーヤーも含まれる)から選んだ、プリアンプ、ステレオ・パワーアンプである。写真でご覧いただくとおり、まず真っ先に浮かぶ印象は、非重厚長大、脱従来型オーディオ機器デザイン、というところではないだろうか。ご承知のように、アンプは性能の理想を追求していくと、どうしても大きくて重くなってしまう。強力な電源部、堅固な構造のキャビネット、放熱性の高いヒートシンク、などということを思い浮かべただけで、大きさと重さは想像がつこうというものである。
しかし、クオードのアンプは、それに対して最初期からあえて小型で、しかも鈍重無骨にならないデザインの製品づくりを目指してきたのである。ラックスマンのセパレートアンプをもう一度、前回のページで見ていただきたい。とてもきれいに出来たアンプで、鈍重ではないし、無骨でもない。むしろ軽快さすら感じられる、とてもすっきりした造形だと思う。しかしそれでもなお、このアンプの美しさや軽快さは、従来型オーディオ機デザインの路線上にあるものだ。もちろん、これは非難しているのではない。いい、悪いというレベルを超えた、造形の観点からだけの話に過ぎない。
もしこのクオードアンプのサイズと重量で、いい音が出せるなら、これは素晴らしいことだ。そしてそれにあえて挑戦したのが、クオードの美学ではないかと思う。そして、この全体に丸みが感じられるキャビネット、オーディオ機器には珍しい配色のファッショナブルなツートーンカラー、ハイファイオーディオ機器としては、一回り小型のボディと軽量。これが自分の部屋にセットされたイメージを思い描くと、すっきりとして、なんともフンワリした温かみが感じられるのである。加えて、この価格である。これなら、十分に実践的購入を考えられる範囲ではないだろうか。




