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| トールボーイのキャビネットに、3つのユニットとバスレフの開口部が一直線に並んだすっきりとした配置 |
オーディオって、難しく考えるとドンドン深入りして迷路に迷い込んでしまいがちだが、こう考えると簡単で、気持ちがすっきりする。つまり、オーディオとは、「自分の気に入った音で、好きな音楽を鳴らすこと」に尽きるのだ、と。
ではどうしたらいいかというと、まず第1歩は、いいスピーカーを探すことなのである。その第1歩を「CHORUS 816V」で踏み出せば、かなり困難は克服できる。ここで、ぜひ知っていただきたいのは、オーディオの音は、機器を組み合わせてスピーカーから出てくる音がすべてではない、ということ。じつはそのスピーカーが置かれる部屋の音と、スピーカーの音の合計されたものが、オーディオの音なのである。
たとえば、日本人の大好きなオーケストラ「ウィーン・フィルハーモニー管弦楽団」の来日コンサートを、上野の東京文化会館で聴くのと、赤坂のサントリーホールで聴くのとでは、かなり音が違う。人の耳には、オーケストラから出る音と、ホールの音が合わさった音が伝わって、音楽として聴こえているからなのである。ホールの音とは、そのホールの残響の長さや、反響の性質によって生ずる音響条件のことで、これがホールによってさまざまに違うから、同じオーケストラでもホールによって音が違ってしまうのだ。もちろん、ホールの違いを超えて、そのオーケストラの音というものも存在するのだが、ホールの影響は非常に大きい。
スピーカーも楽器や、オーケストラと同じような性質があって、それが置かれる部屋によって違った音がする。要するに、オーディオの音は、スピーカーから出る音と、それが置かれた部屋の音響条件が組み合わされたものなのである。そういう事情で、大型高級機を狭い部屋に置いても、必ずしもいい音がするとは限らない。むしろ部屋のサイズにちょうどピッタリの大きさで、出来のいい小型スピーカーがあれば、そのほうが総合的にいい音がするものなのだ。もちろん出来がよくなくては話は始まらない。そこで、「CHORUS 816V」の基本特性を点検してみよう。
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| 165mm口径のコーン型ユニット(左)と、トゥイーター(右) |
振動板ユニットは3つあるが、3ウェイではなく、2.5ウェイ(フォーカル表記では“2 1/2way”)となっている。まず、いちばん上のトゥイーターは、振動板はアルミとマグネシウムの合金によるハードドーム。しかも前面が凹になった逆ドーム。フォーカルの現在最上位モデル「Utopia Be」シリーズでは、ベリリウムという非常に固くて音速の早い特殊金属が使われているが、「CHORUS 816V」では、価格を抑える意味もあってそれ以前の素材が使われたのだろう。しかしこの素材はフォーカルが熟知したもので、下の周波数帯域とのつながりや、エネルギーバランスのチューニングという面から考えると、このクラスの製品ではむしろ有利に働くといっていいかもしれない。
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| 入力端子部 |
トゥイーターの下にある2個のコーン型ユニットは、どちらも165mm口径。しかし、上のユニットはミッドバスと呼ばれている。ユニット間のクロスオーバー周波数は、300Hzと3kHzとあるから、このユニットは300Hz〜3kHzまでを受け持っていることになる。そして、下のユニットが300Hz以下の、いわゆるウーファーとなるわけだ。これなら、一般的な「3ウェイ」なだが、「2.5ウェイ」というのは、2個のコーン型ユニットは、まったく同じ動作をしているのではなく、上が中低域帯域、下が低域という異なった動作をさせているからだ。300Hz以下の帯域では、2つのユニットが実は同じ働きをして、低音域の表現力を高めている。こういう、手法はフォーカル以外にも採用している例がいくつかあるが、限られたユニットでダイナミックレンジと表現力を拡大するのには有効だ。
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| 底部には4隅にネジ式スパイクがついた、アルミダイキャストのベースが付属する |
なお、この2つのコーン型ユニットの振動板は、仕様には「ポリグラス」と表記されているが、シリカの超微小粒子を含浸させたパルプ系の素材。理想の振動板といわれる「パルプ系振動板」の欠点を補ったものである。
3つのユニットをつなぐ、クロスオーバーネットワークは、フォーカルが自信をもっている、「OPC(optimum phase crossover)」というもので、特に位相特性に優れている。オーディオ再生で、もっとも管理の難しいのが位相特性。もともとの回路がよくできていれば、部屋でチューニングする場合も安心だ。
しっかりしたスパイクつきのベースをもつ、剛性の高いキャビネット、安定した動作で定評のある振動板素材、成熟した技術による磁気回路やネットワーク回路…、特に目新しい新素材や新技法を使わず、25年の開発製造で蓄積された、極めてオーソドックスな手法によって作られたスピーカー、それが「CHORUS 816V」なのである。




