Dynaudioが設立された1977年といえば、オーディオではCD誕生前夜というような時期である。CDが市場に登場したのは、1982年10月だが、日本のソニーとともに、CDのライセンサーであるフィリップスは、デンマークとはドイツ北部を挟んですぐ南隣のオランダが本拠地だ。当然、デジタル技術については、Dynaudioの創業者たちも強く意識していたであろう。創業者で、現在DynaudioグループのCEOであるヴィルフリート・エーレンホルツ(Wilfried Ehrenholz)は後にこう回想している。
……新しいデジタル録音技術やユーザーのハイエンド志向などによって引き起こされた世界的なハイクオリティ・スピーカーの需要増は、Dynaudioの市場シェアを引き上げる完璧な土台を提供していた……
プレーヤーやアンプほど直接的ではないが、スピーカーも“デジタル”を意識しなければ、1980年以降の大きな成功は得られなかったのである。それは、再生帯域とダイナミックレンジの大幅な拡大、そして驚異的なSN比の向上という、デジタルがもたらしたオーディオ変革の3大要素に応えなければ、優れたスピーカーにはならない、という事情によるものだ。そういえば、「DYNAUDIO」というネーミングは、本国のホームページにも、日本のデイナウディオジャパンのホームページにも書かれていないが、「dynamic」と「audio」を組み合わせたものであろう。その社名もまた、デジタルオーディオ時代の広大なダイナミックレンジにふさわしいように思われる。
ところで、ヴィルフリート・エーレンホルツによれば、彼らは最初期、ドライブユニットは他社製のものを使っていた。しかし、これでは独自のクロスオーバーネットワークや、精巧なキャビネットを使っても、本当に自分たちが思う優れたスピーカーを作ることはできない。スピーカーはドライブユニットの性能を超えることはできないのだから、なんとしても自社製のドライブユニットを開発しなければならない、と彼らは考えた。
そして設立3年後には、Dynaudioの全製品に自社開発のオリジナルユニットが搭載されることになるのだが、ここで驚くのは、その開発姿勢である。
……新しいスピーカーの開発にとりかかるとき、技術者には完全な自由が与えられます。素材は? と訊かれれば“好きなだけ使いなさい(私たちのごみ箱をあさるだけでプロフェッショナル・スタジオができるかもしれません)”。コストは? と尋ねられれば“問題外”。時間は? と問われれば“スカンデルボルグ(Dynaudioの所在地)にはいくらでもある”……
Dynaudioの「物づくり精神の徹底」ぶりはこのよううなレベルなのである。今日の製造業で、このような姿勢をとることができる企業は、どれほどあるだろうか?
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ある製品を作る段階で最大限に考えられ、つぎ込まれた技術は、大きさや価格の違い、使用条件に合わせてそのモデルに必要十分と考えられるものだけが盛り込まれている。そして次の新たな製品やシリーズを開発するときには、すでに蓄積された技術は尊重されるが、新たな製品に必要とされる新たな技術が開発される。したがって、30年を振り返ってみたときに、それまでに開発された技術を総合的に取り込んだ製品というものは、原則としてDynaudioにはあり得ない。そこで、30周年を記念して、これまでに開発した技術を総合し、新たなモデルを一品作ってみよう……、これが記念モデル製造の基本理念ではなかったか、と想像される。
そこで、Dynaudioの現役シリーズを少し見てみよう。Dynaudioのスピーカーはスタジオ向けのプロ用機から、民生用ハイファイオーディオ機器、カーオーディオ用、ホームシアター用など多岐にわたっているが、ここではホームユース・ハイファイモデルに限定する。
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まず、Dynaudioのフラグシップモデル「Evidence(エヴィデンス)シリーズ」。Dynaudio独自の指向性制御技術「DDC」が、このシリーズで初めて採用された。外観が非常に美しいトールボーイで、それぞれ2組の中高域ドライブユニットを中央に配置し、これを上下から2個ずつの低音域ユニットが挟むという大掛かりなシステムである。ユニットの取り付け方法や配置、バッフルの素材や設計、キャビネットとの相関関係に、Dynaudioの技術が結集されているのである。
またトゥイーターはDynaudioオリジナルのシルクドーム。これとコーン型スコーカーを2個ずつ組み合わせた部分のバッフルはアルミ製で、ウーファー部のキャビネットと別ボックスになったような設計で、ウーファーの振動によるキャビネット内音圧の影響が徹底して排除されている。シリーズ最上位は「Master」、それに「Temptation」が続き、ホームシアター用に横置きの「Center」もラインナップされている。
次は「Confidence(コンフィデンス)シリーズ」。これは自ら放出する音の反射を減らすために徹底的に研究され、精密加工された前面バッフルが特徴的なユニークなシステム。美しい木製キャビネットに航空機のコックピットを取り付けたような外観デザインは実に独創的だ。「C4」「C2」「C1」そして「Center」がラインナップされている。
そして「Contour(コンター)シリーズ」。これは上記2シリーズの技術を多数取り入れて開発されたシリーズで、フロアスタンド型「S5.4」から超小型ブックシェルフタイプ「SR」まで6モデルが用意されている。このシリーズで目につくのは、写真でおわかりのようにドライブユニットの配置が通常とは逆で、高域担当のトゥイーターが最下部に置かれている。ユニット取り付けの前面バッフルが大型なのも印象的だ(これらのシリーズ、およびその他の製品については、ディナウディオ・ジャパンのホームページをご覧ください)。




