しかし、今回の記念碑的モデルでは、もう1つ、外観デザインの独創性も見逃せない。オーディオ技術と外観デザインの不即不離の関係があって、初めてこのスピーカーは記念碑的作品の名に値する存在となっているのだ。
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| 周辺の物体が映り込み、光の当たり方で見え方が変化する |
このデザインは、日本でもよく知られているインダストリアルデザイナー、ロス・ラブグローブ(Ross Lovegrove)によるものである。彼の目指す、機能的・人間工学的手法で情緒的魅力を表現するものとして、このスピーカーデザインは、高い完成度をもっているのではないかと思う。ただ、これはあくまでもスピーカーなのだから、いい音につながっていなければ、何の意味もない。
キャビネット本体は6ミリ厚の特殊加工されたアルミで、「スーパーフォームド・アルミニウム」と呼んでいるそうだが、どのように加工したのか、中央部をギュッと握って少しヒネリを効かしたような形はスピーカーとしては独創的だ。そこには当然、力学的強度も考えられているはずで、いい音にもつながっているのだろう。光の当たり具合によって見え方が変化するのも、これまでにはない手法だ。
初対面の驚きと若干の違和感が消えると、そこには光沢の派手さも次第に薄くなり、置かれた周囲に静かな厳かさが感じられてくる。金属的な鋭利さよりも、触れると手の形に変形してしまいそうな柔らかささえ感じられてくるのである。優れた造形のみがもつ不思議な「力」としかいいようがない。
さて、お待たせしました。最後にレフーノ&アネーロの後藤裕一さんの説明を聞きましょう。
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| 「MUON」の構造図。前方上から3番目は、KEFオリジナルの同軸2ウェイ「Uni-Qドライバー」、その下に中低域担当のドライバー、そしてそれらを。2個1組のウーファーが上下から挟む。背後の壁からの反射音をコントロールする2個のウーファーユニットが背面にある。以上合計、4ウェイ8ユニット9ドライバーという複雑な構成となっている |
オーディオでは、“鋭敏な専門家の感性を発揮して、常人にはできないこだわりを注いで生み出した製品”という言い方のアピールをよく聞きますが、人間の感性も立派ですがやはり日々の体調や機嫌もありますし、その辺だけを頼りに作ったといわれるとなんだか不安も残りますよね。
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| 左が前面、上からウーファーが2、Uni-Qドライバー、中低域用ドライバー、ウーファー2。右側は背面で2個のウーファーが取りつけられている |
KEFの場合、創業者のレイモンド・クックの考え方からして、最初は感性で製品のアウトラインをイメージするものの、最後はしっかり最新技術を使って客観的に検証するといった手法をとっているようです。
さて、そんなKEFですが、従来は実用的といいましょうか、あまり高価なハイエンド機器というよりも、そこそこの予算を捻出すれば、その価値に見合ったいい製品を供給する、言い換えれば中堅クラスの高級オーディオブランドというイメージがありましたが、ここへきてこの超ハイエンド領域の製品「MUON」を出してきました。
狙いは、やはり普段はいい製品を、より多くの方々へといったスタンスで、中堅クラスの製品を出しているけれども、ハイエンド・クラスでもきっちり勝負できる実力があるんだよ、ということを示したということだと思います。KEFの力量をよく知らない連中の度肝を抜くといった狙いは、大いにあったと思います。
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| レフィーノ&アネーロの後藤氏はKEFの最高傑作という |
それにしても、この製品は素晴らしい仕上がりだと思います。上から下までネジ一本、継ぎ目ひとつない。昔見たSF漫画の話ですが、宇宙人が作ったロボットを捕獲して、地球の人間が解体を試みるといったシーンがありました。でも、そのロボットには接合部分やネジ止め部分といったものが一切ない、どこから解体すればいいか検討もつかないものでお手上げになる、といったストーリーでした。このスピーカーを見て、それを思い出しましたね。形状といい、加工技術といい、まさに未来的です。
この製品、もちろん、KEFの最高傑作として、すべてのオーディオ・ファンのみなさんにおすすめしたいのですが、価格的にも、大きさからも、これまでの製品のように一般家庭向きとは言い難いものです。しかし、青山や表参道に軒を連ねるデザイナーズ・ブランドの会社のエントランスに、こんなスピーカーがあって、センスのいい音楽を流していたらいいだろうなぁと思います。また、企業のショウルームとかでも映えるのではないでしょうか。そういったコンセプチュアルにブランド・イメージを作っていくメーカーやデザイナーの目にとまって欲しいと思っています。




