ヨーロッパ文化の伝統に根ざした開発製造の精神と前ページに記したが、ダリ社ではそれを「Musical
Emotion」と言い、常に念頭において物づくりをしている、といっている。MusicalもEmotionもすでに日本語に深く入り込んでいる言葉だが、これが組み合わさると、重層的な意味が熟成したワインのように浮かび上がってくる。最適な訳語はない。しかしその意味の延長線上で、彼らはこういっている。
……機器の存在を感じないで、音楽を楽しく聴いてもらいたい、そんな願いで作っています……
さて、レフィーノ&アネーロの金子さんに少し詳しく解説してもらうことにしよう。
――1983年に創業したDALI社は、創業20周年記念モデルとして2003年に「HELICON
400」を発売しました。この時点ですでにフラグシップ・モデル「Euphonia」というスピーカーが発表されていました。「HELICON」は、その上級モデルの技術をベースに作られたスピーカーなのです。これが欧米で高い評価を受け、大変な人気を呼びました。そして、日本でも多くのファンに歓迎されることになったのです。今回の「HELICON
400MK2」は、それをさらに改善して生まれた新製品です。
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| 扱いがいがあるスピーカーだ、という金子さん |
20周年記念モデルとの主要な違いは、ドライバーユニットの磁気回路の強化と、ネットワーク回路の改良、そしてキャビネットの剛性を高めた点にあります。実際の音を聴いてみますと、最初はあまり違いが感じられなかったのですが、鳴らしていくにつれてぐっと抜けが良くなり、低域のレスポンスもよくなってくるのが、はっきりとわかりました。音の純度がぐっと高まって、密度感も増したような印象を受けました。
この抜けがよく爽やかな中高音域の再現力は、やはりダリ社のお家芸である「ソフトドーム+ダイポール・リボンのハイブリッド型トゥイーターモジュール」の効果でしょうね。非常に独特なドライバーだと思いますが、よく考えられた実践的技術といっていいでしょう。それから低域のレスポンスがいいのは、165ミリという、やや小さめのコーン型ユニットを2つ、スタガード・ドライブ方式で使っているのが効いていると思います。
ダブルウーファーという方式を使う製品はかなりたくさんありますが、両方が同じ帯域を受け持つもののほうが多いでしょうね。これは小さめのユニットで応答性を向上させ、低音域の量的不足感をダブルにして補う手法です。これに対して、ダリの「HELICON」では、上のドライバーが、700Hzあたりでロールオフします。そこから上の周波数帯域を受け持って、トゥイーター部に3kHzでつなげているんです。そして、下のドライバーはさらに低い帯域まで受け持っています。この手法の違いが、ダリの音の個性にもつながっているのだろうと思います。
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| 基板を使わずハードワイヤリングされたネットワーク |
しかし、このような仕掛けが理論通りに働き、狙ったような再現力を発揮するには、ドライバーの性能だけではうまくいきません。しっかりしたネットワーク、そうそう、HELIKONのネットワークは基板を使わず、部品を直接接続するハードワイヤリングという手法で作られています。部品の精度も高いのですが、こうした手を掛けた入念なネットワークの設計も効果をあげていると思います。
そして、当然ながら強固なキャビネット構造が必要になります。これは、ダリ社の周辺がヨーロッパでも有数の豊かな森林資源に恵まれている地域で、木製の高級インテリア製品でも評価の高いところですからね、非常にいい材質の木材が使われています。こういうことが相乗効果を発揮して、トータルで充実した再現力を得ているのです。
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| しっかりした入力端子 |
実際の音楽でいうと、弦楽四重奏とかボーカルものでは、その中域の暖かみと高域のすっきりとした伸びが魅力で、これは以前のモデルもそうでしたが、これが低域の充実によってさらに引き立ってきたように思います。特定のジャンルを選ばずに、さまざまな音楽を楽しめるスピーカーという表現がありますが、このスピーカーはまさに、その言葉に当てはまると私は思います。
ただ、置き場所や置き方によってかなり表現力は微妙に変化するので、しっかりとしたベースに置く必要がありますね。ポンと置いただけでは性能を十分に発揮してくれないところがあります。そういった意味では、オーディオ・ファンの方々には扱いがいのあるスピーカーなのではないでしょうか。――



