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| 「HELIKON 400MK2」はトールボーイタイプのフロア型 |
ここでちょっと、スピーカーの再現力と、キャビネットの形状を復習しておくと、近年は圧倒的に「HELICON」と同じような、トールボーイという細長いタイプが多くなっている。フロア型スピーカーでは、かつては横幅の大きなタイプがむしろ主流であった。この変化にはいくつかの理由が考えられるが、一つは大きな部屋をもつことが難しくなってきた住宅環境にある。トールボーイは本体底部の面積が小さいので、あまり大きな設置スペースを必要としない、つまり使いやすいということがあげられる。
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| 上から見ると、キャビネットはこのような形をしている |
もう一つ重要なことは、キャビネットの横幅が小さいことによって、ドライバーユニットから放射される音が、キャビネットから受ける悪影響を軽減できるというメリットがあることだ。いわゆる音離れがいいサウンドは、横幅が狭いほうが得やすいのである。
そしてここで注目していただきたいことは、ダリのスピーカーでは、キャビネットに占めるドライバーユニットの面積が一般的なスピーカーよりも大きいことである。これがダリの再現性能にいい効果をもたらしている。
これには、少し説明が必要になるが、キャビネットに占める、音が出る部分の面積が大きいほうが、音が硬くなりにくいという傾向があるのだ。これは本欄案内人の長年の経験から得た確信である。特に、中高域では、指向特性を良くするために、小さなスコーカーやトゥイーターが使われることが多いが、どうしても音は鋭く硬くなりがちだ。これを柔らかく豊かな響きをもった音にするには、ユニットを増やす、またはホーン型にするなどの別な工夫が必要になる。
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| キャビネットの内部構造。(1)吸音材と支柱が見える内部 (2)リボン型ユニット (3)ソフトドームユニット (4)入力端子 (5)多層MDF材ベースのキャビネット (6)MDF材2層構造のフロントバッフル |
こういった点から考えると、ダリの「ソフトドーム+ダイポール・リボンのハイブリッド型トゥイーターモジュール」という仕組みは、結果として中高音域のユニット部分の面積を大きくしているので効果がある。さらに、中低音域ユニットが2個のドライバーで構成されているのも、同じような意味から、柔軟で豊かな拡がりの中低音を得るのに効果を発揮している。ユニットが増えると、ユニット相互の干渉や、歪みの増加などというデメリットを発生する危険性もあるが、ダリでは2つのユニットの受け持ち周波数帯域を変えて使用することや、ネットワークの入念な設計、強固で定在波の発生しないキャビネット構造によって、その悪影響を避けるのに成功している。
ところで、シリーズ名の“HELICON”だが、これはギリシャ神話に出てくる山である。そこには学問と芸術の女神ムーサ(Musa、ミューズ=Museは英語読み)が住む。また、多くの人はナルシストの語源になっている、若者ナルキッソス(Narkissos、ナルシス=Narcisseはフランス語読み)が、ヘリコン山の泉に映る自分の姿に恋し、恋焦がれ、やがて憔悴死した、という神話で記憶しているかもしれない。
なぜわざわざ、こんなことを書くかというと、こういうネーミングには、オーディオ機器を製造するにあたっての、この会社の精神的バックボーンがうかがえるからである。近代ヨーロッパ文化の源である、ギリシャ神話の山を持ち出したのは、オーディオが単なる“音の出る機器”には終わらず、録音された音楽を再現するという行為によって(表現芸術として)文化に深く関わるのだ、という理念を物語っているに違いないからだ。その高い理念があるからこそ、社歴25年ほどの短い期間に、ハイエンドオーディオと呼ばれる優れた製品を数多く作り出すことができたのである。



