CDプレーヤーの役割は前半が、ディスクから信号を読み取ること、後半が読み取ったデジタル信号(D)をアナログ信号(A)に変換することである。前半だけに絞って設計された製品を「CDトランスポート」という。D/A変換部まで備えた製品が「CDプレーヤー」である。「TL53Z」は前半部で精密に信号を読み取る作業のなかに、ベルトドライブ+トップローディング方式、スタビライザー使用というアナログライクな遊び心を加えた。そして、もう一つの遊び心が後半部に秘められている。
D/A変換のキーデバイスは最新のバーブラウン社製PCM1792(192kHz/24bit) で、このチップを左右独立で2基搭載(デュアル・モノ構成)して、高いD/A変換精度を得ている。ここまでは一般的だが、この先が「TL53Z」の見せ場で、オーバーサンプリングレートとデジタルフィルターを好みで切り替えることができるのだ。オーバーサンプリングレートは32、64、128(fs)、デジタルフィルターは FlatとPulseの2つである。
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| 真空管アンプ「TUBE53」の組み合わせは遊び心にあふれてベストマッチ |
理論的な説明は難しくなるのでここでは避けるが、このような切り替えによって、音の表情を変えることができる、という機構はCDプレーヤーでは珍しい。ちょうど、アナログプレーヤーで、カートリッジやトーンアームを変えて音の変化を楽しむことに通じるのではないだろうか。ただし、こういう機構は「慎重に、そして最小限に使う」というのがコツである。まず、普段よく聴いているディスクを掛けて、じっくり試聴しながら音の変化を探る。そうして、オーバーサンプリング周波数や、デジタルフィルターの切り替えによる、音の変化量を把握する。この体験を常に参考にしながら、他のディスクディスクを聴くときには、その音楽の特徴や録音状態に合わせて切り替えるようにしたい。
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| 「TL53Z」のリアパネル。入出力端子もしっかりしている |
このように「TL53Z」は、デジタルのプレーヤーとしては非常にユニークな要素をもっているが、基本的な性能、外観デザインは非常にオーソドックスな手法によっている。構造は非常に堅固で安定感がある。特に無垢のアルミ押し出し成形によるキャビネットは、美しく魅力的だ。遊び心と性能を両立させたこのCDプレーヤーは、使えば使うほど愛着が増していくことだろう。
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| 真空管プリメインアンプ「TUBE53」 |
それにしても、人間というのは贅沢なものだ。広大なダイナミックレンジ、限りなく平坦で広い周波数特性、雑音のほとんどない高S/N比、というオーディオの3大目標を、かなり理想に近いレベルで獲得したデジタルオーディオに、アナログ時代の使い勝手や外観デザインを求める。性能は後戻りできないが、感性に訴える部分は、良いものなら後戻りするのも、時にはいいかも知れない。
となると、このCDプレーヤー「TL53Z」には、やはり高性能にして、アナログライクな操作性やイメージのものを選びたい。そこで登場するのが同じC.E.C.の真空管式プリメインアンプ「TUBE53」ということになる。



