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もういちどオーディオ 案内人:船木文宏
専門店からの情報発信  
2007.9.26更新

Refino & Anhelo注目のシステム 「試聴スペースの主役をクローズアップ」 85.スタックスのイヤースピーカーを聴く

ERECTROSTATIC EARSPERKER SYSTEM
STAX SRS-4040A(SR-404+SRM-006tA)
価格 134,400円(税込)

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これは、ヘッドフォン革命だ

ボンビバンの「もういちどオーディオ」の基本理念は、というと少し大げさで気が引けるのだが、「スピーカーからの音で音楽を聴くこと」であり、これをトップページの冒頭に看板として掲げている。もちろんこれは、今や音楽を楽しむ主流になりつつある、デジタルオーディオプレーヤーのヘッドフォン再生を意識しているのだ。


――ヘッドフォンからの音は思いのほか軽快で充実している。しかし、私たちは耳に音を押し込んで頭内定位したサウンドを楽しむだけでなく、スピーカーから部屋に響くサウンドで音楽を聴きたいと思う。それが、オーディオで音楽を聴く醍醐味だから。――


スタックスコーナー
レフィーノ&アネーロの「スタックスコーナー」

などと、敵の長所も認めつつ、あくまでもスピーカー再生をオーディオの王道としているのである。

ところが最近、ついに大事件が勃発したのである。といっても、どこかの総理大臣が突然“職を辞する”ごとく、看板を下ろすわけではない。本欄の情報発信基地、東京秋葉原の専門店「レフィーノ&アネーロ」の責任ある立場の人物が、当案内人に重大な挑戦状を突きつけ、恐れもなく「これを聴いてみよ」と命じてきたのである。

それが、なんと、どう見てもヘッドフォンなのであった。なんという恥知らずで無礼なヤツめ、と思わず案内人はのけぞった。しかし、そんな内心のカケラも顔に出すことなく、ニッコリと微笑み、慈愛の眼差しで相手を見つめつつ、挑戦を受けたのであります。


スタックスのヘッドフォン
スタックスのヘッドフォンはこんな形をしている

こんなセリフを長々と吐いているのは、じつは、これがじつに見事な製品であったからである。その製品とは、スタックス(STAX)の静電型ヘッドフォンシステム「SRS-4040A」。スタックスでは、ヘッドフォンという言葉は使わず、「イヤースピーカー」と呼んでいる。

静電型は一般的には「コンデンサー型」と呼ばれることが多いが、これは発音原理が静電気によって生ずる駆動力で振動膜(ダイヤフラム)を振動させることによる、という意味からだ。そう、部屋置きのスピーカーでは、クオードの「ESL」が有名。スタックスもそもそもは静電型の部屋置きスピーカーを作っていたのであり、1990年代の大型システム「ELS-8XBB」などはなかなか評価が高かったのである。

スタックスが静電型のヘッドフォンシステムを開発したのは、おそらく第一に、従来型ヘッドフォンに飽き足らない気持ちが強かったからであり、第二にこれを克服するには成功した静電型スピーカーの技術が生かせると思ったからではないか、と推察される。

ヘッドフォンは、今日ではオーディオにはなくてはならないほど普及していて、その種類も業務用から一般向けまでじつに多い。しかし、オーディオ機器としての側面からみると、いくつか問題があり、ヘッドフォン嫌いも少なくない。あくまでも、外で音楽を聴いたり、他人に迷惑をかけないため、あるいは録音現場の検聴用というのが使用の主目的であり、オーディオ機器としてはサブ的存在だととらえる人が多いのである。

いちばんの問題点は、その定位である。自分の身体から離れたところにセットされたスピーカーから出てくる音を、耳で聴く場合と、小さな発音体を耳に押し付けたり、耳道に挿入したりして聴くのとでは、音楽の聴こえ方(=定位)が違う。ヘッドフォンの場合は、一般的に「頭内定位」といわれる。あたかも、ホールやライブハウスで音楽を聴くような臨場感が得られるのだが、それは離れたスピーカーからの音を聴く場合と違って、響きの中に埋没するような、不思議なバーチャル定位なのである。耳骨、耳道に直接振動を伝えることも、空気の振動だけを受けて知覚する聴覚生理とは異なる要素をもつ。


SRS-4040A
    試聴したシステム「SRS-4040A」

要約すると、ヘッドフォンで聴く音は、身体から離れた位置に置かれたスピーカーからの音を聴くのとは、かなり違った聴こえ方になり、これがヘッドフォン派と、反ヘッドフォン派を生む大きな原因になっているのだ。


スタックスの「イヤースピーカー」は、その反ヘッドフォン派にとっての欠点をじつに見事に克服している。試聴の印象は、まさにこれは「ヘッドフォン革命」ではないか、といいたくなるぐらい「頭内定位」とは別次元のものであった。それが、スタックスがヘッドフォンという言葉を排して、「イヤースピーカー」と名づけた最大の理由であろう。

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