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もういちどオーディオ 案内人:船木文宏
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2007.8.8更新

Refino & Anhelo注目のシステム 「試聴スペースの主役をクローズアップ」 82.ティールの最新モデルを聴く

SPEAKER SYSTEM  THIEL CS2.4 価格 882,000円(サテンブラック/税込・ペア)
  価格 1,029,000円(アンバーウッド、バーズアイメープル/税込・ペア)

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徹底した技術力で、スピーカーの理想を追求する

ティール(THIEL)のスピーカーを初めて聴いたのは、1988年に登場した「CS1.2」というモデルであったろうか。横幅はやや狭いが、高さは1.5mほど、前面バッフルが後方に傾斜した独特のスタイルが印象的だった。見かけはさほど大きく感じないのだが、実際にはキャビネットの造りが非常にがっちりしていて、ドライブユニットもネットワークも大掛かり、結果としてかなりの重量級システムになる、という本格フロア型システムなのであった。いかにも重厚な音が出そうな雰囲気にあふれているが、この手のシステムの能力を引き出すには、アンプは相当力量のあるものを選ばなければ駄目だろうなと感じられた。

スリムだが豊かで重厚、繊細でしなやかな再現力をもつ
「FS 609 X-PI」

ティールは自分の音の好みとは少し違った方向のスピーカーであったせいもあって、初めての出会い以来、その存在は常に気になるものの、あまり近づかないようにしていた。そして久しぶりに、今回紹介する「CS2.4」に出会ったのである。非常に懐かしく感じ、最初に出会った巨大システムに比べて、ずいぶんコンパクトになっていたのにまず驚き、そしてその扱いやすさと、鳴りっぷりよさに感動した。


ティールは1976年、アメリカ、ケンタッキー州で設立された比較的新しいメーカーだ。そのスピーカー開発の基本方針は、創立以来30年を超えても一貫して変わっていない。その特徴は一言でいえば、オーディオ再生におけるスピーカーの理想を、オーディオ技術で明確に規定し、それを守り続けていることである。理想追及の過程でさまざまな失敗や困難に遭遇しても、その解決のために最初に掲げた理想を曲げることがない。理想に一歩でも近づくために、さらに努力を傾ける、という姿勢がティールらしさなのである。

サイドから見たキャビネット。後方に少し倒した台形というティール独自の形

具体的な事例でいえば、そのキャビネットの形、構造は、最新モデルの「CS2.4」と当初の形とほとんど変わっていないのである。普通は、横幅の広い前面バッフルで設計したら、次はトールボーイタイプにしてみるなど、いろいろな形に挑戦したくなるものだが、ティールは一度「これだっ」と決めた基本形を守りながら、理想を追求していくのである。


メーカーの言葉を要約すると、ティールのスピーカー開発の基本姿勢はこうである。
「スピーカーは電気信号を音に変換するトランスデューサー(transducer=変換器)である。その変換器に求められる性能は、音色、音場、過渡応答、ダイナミズムなどの、普遍性のある忠実度である。

この理想を実現するための技術的課題が、平坦な周波数特性、正確な時間/位相応答性、低歪率、低エネルギー蓄積などである」

 

ここに掲げられた理想は、わかりやすくいうと、スピーカーにある種の“芸術的な個性”を認めず、あくまでも入力される電気信号を忠実に音に変換する機器としての自覚である。しかし、それは“言うは易く行なうは難し”の典型で、正確な変換器に徹するには、スピーカーには“あいまい”な要素が多すぎるのである。見掛けは箱と磁石と振動板という少ない素材で構成されているが、そのすべての部分に誰もが聴いて納得し、測定して理想的な測定値が得られるという“決定打”がない。

ネットを外すと独特のユニットとその配置がわかる。一番下の
馬蹄形の部分は、低音を増強するパッシブラジエーター

そういう“あいまいさ”を上手に生かすことによって、再現性の味を生み出して成功しているモデルも少なくない。それが、設計者の芸術性の高さと称揚されることもある。しかし、ティールはそういうスピーカー作りを排し、あくまでも“限りなく正確な変換器”に徹するのである。

ごく一般的な音楽・オーディオファンに分かりやすい例で、ティール自身が説明しているのを紹介しよう。
「私たちの製品には、いちばん最初のモデルから最新モデルにいたるまで、“レベルコントロール”をつけていません。私たちは、スピーカーを(変換器として)正確に作っているので、そういう便宜的なもので音を変えてほしくないからです」

レベルコントロールは置かれた部屋の音響条件に合わせるときにも、つい何気なく使ってしまう人が多いものだが、それをティールは“正確さを壊す行為”として否定するのである。ということは、部屋の条件に合わせるためには、セッティングや、部屋自身の整音で工夫しなければならないということで、ユーザーにとっては不都合かもしれない。しかしそこを妥協しないのが“ティールらしさ”であり、オーディオ的にも正しいのである。そしてその頑固さによるマイナス面も彼らはよく承知していて、こう語っている。
「私たちのスピーカーが広く一般に人気を博するということのためには役立たないとしても、私たちはあえてその方針を決めたのである」

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