上には上がある、それが世の中ってもんだ、と思わず感動のため息をついてしまいたくなるオーディオ製品があるもので、特にスピーカーに多いようだ。しかし自分の懐具合や部屋の大きさと比較していっているのであれば、それは仕方がない。ここでいいたいのは身近な尺度を離れても、ウ〜ン、と思わずため息をつく、そういう製品があるということである。
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| 試聴スペースにセットされた「X-2 Alexandria スタンダードモデル(内側)」。外側のスピーカーは、第46回で紹介したウィルソンオーディオ「MAXX2」 |
その代表的存在が、ここにご登場いただく、ウィルソンオーディオのスピーカーシステム「X-2 Alexandria」。特注品になら、とんでもないサイズ、重量、価格を誇るものがあるけれど、仮にも一つのシステムとして一定の形で公表され、価格がつけられているものとなると、当サイトの案内人が知る限りでは、今回の製品が最高最大のものである。317kgの巨体。価格は仕様によって多少違って、19,845,000〜21,094,500円。じつに何とも堂々たるものである!!
こういう製品をご紹介申し上げるからには、こちらにも覚悟というものが必要になるのでありまして、キャビネットやユニットの詳細などについては一切触れないことにする。それは、発売元の大場商事のホームページ、パンフレット、レフィーノ&アネーロ担当者に譲るのが礼儀というもの、と心得るのである。
では、ここでいったい何を申すのかといいますと、なぜ、こういう製品が存在するのか、という感慨を若干吐露することにしたい、のである。そのため息にも似た感慨が、オーディオを愛する人の参考になれば、望外の喜びなのであります。
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| 正面と横から見た「X-2 Alexandria」 |
オーケストラを目に浮かべていただけば、すぐにご理解いただけるとおり、音楽というものは、じつにさまざまな楽器、人の声などによって生み出されるものだ。これを、原理はスピーカーとほとんど同じ仕組みの、マイクロフォンで集音し、それを何らかの信号に変換して、何らかの媒体に記録する。そしてその媒体からオーディオ機器というもので信号を、元の音に復元する。これが、オーディオの筋道である。ここで、問題になるのが、最終過程に位置するスピーカー。ここに送り込まれた電気信号でスピーカーの振動板を動かし、その動きによって生まれた空気の振動が耳に届いて、ああこれは元の音だと知覚するわけである。
この基本的筋道は、誰もが容易に理解できる。しかし、それはあくまでも頭で理解するということであって、精神肉体の双方で実感して納得する、というのとは少し違う。
「なぜ、こんな紙のようなものが振動することによって、弦楽器や管楽器、人の声が描き分けられるのか」
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| 上部の3つのユニット |
まだまだ疑問は尽きないが、話を簡潔にするために、疑問はここまでにしておく。要するに、頭では理解できても、本当に納得できないオーディオの“秘密”というか“不思議”は、スピーカーに集中している、と当案内人は改めて感慨深く感ずるのであります。そしてその不思議の解明に命を削っているのが、スピーカー設計者であり、その製造にかかわるすべての人なのだ。
一定の形や大きさに加工された紙、あるいは特殊な化学素材や金属が、電気信号に連動して運動することによって、なぜ、ほぼ元の音だと知覚できる音に戻るのか。こんな不思議なことを成し遂げるスピーカーとは、なんと不思議なものであろう。
実はこのように、スピーカーの働きが不思議だからこそ、長年にわたって次々と、いろいろな形や仕組みをしたものが生まれてくるのではないだろうか。これこそ、不思議を完全に解明した、と思って製品を世に送り出した瞬間から、誠実な開発者は、いや、もっといい方法があったのではないか、と思い悩み、新たな不思議解明へと進むのである。
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| ユニットはこのように組み上げられている |
まさに、ウィルソンのスピーカーというのは、記録された信号を、可能な限り元の音と同じ音、あるいは同じ音と感じられる音に復元するために、長年スピーカー開発に邁進してきたのである。たとえば、その営々とした研究の結果のひとつとして、ウィルソン独特の、一部のユニットが可動式でフレーム取り付けられるという手法が生まれたのである。受け持ち周波数帯域の異なるユニットを、共通の前面バッフルに取り付ける方式が圧倒的に多い中で、まるでロボットのような形状に組み上げられるウィルソン方式は、不思議解明に大きく貢献している。
こういうことをずっと考え続け、ある段階にこぎ着けると製品化し、さらに理想をもとめて新たな研究に戻る。この果てしのない“ものづくり”精神に徹底して、ウィルソンのスピーカーシステムは生まれているのだ。そのような作品、特にそのトップエンドモデルやフラグシップモデルと呼ばれる製品について、実用性や価格などの視点から軽々に何かをいうことは心して避けなければならない、と案内人はため息をつくのである。




