わが国の代表的な高級オーディオブランド「ESOTRIC(エソテリック)」が、創設20周年を迎え、アニバーサリーモデルが登場している。まず、SACDプレーヤー「SA-10」(税込336,000円)とプリメインアンプ「AI-10」(税込367,500円)が3月下旬に発売され、4月にはエソテリック初のスピーカーとして「MG-20」(ペア税込735,000円)、「MG-10」(ペア税込210,000円)の2モデルが発売された。今回はそのうち、初のスピーカーから「MG-20」を紹介しよう。
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| レフィーノ&アネーロ2階の“Weekly Selection”にセット されたエソテリック初のスピーカー「MG-20」 |
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「ESOTRIC」は「TEAC」の社内ブランドとして生まれ、2004年4月1日に別法人「株式会社ティアック エソテリック カンパニー」として独立した。ティアックはオーディオファンにはテープレコーダーのメーカーとして、また同時にイギリスのスピーカー「TANNOY(タンノイ)」の輸入元として広く知られている、オーディオ界の老舗である。オープンリール、カセットともに、当案内人も学生時代からティアック製品を愛用したものである。後年、音楽・オーディオ雑誌に関わるようになってから、初めて創業者の故・谷勝馬(たに かつま/1919〜1994)氏にお目にかかった時には興奮、感動を禁じえなかった。
「ESOTRIC」ブランドの最初の製品は、セパレートタイプのCDプレーヤー「P-1」「D-1」で、1987年の発売であった。それから20年、というわけである。このプレーヤーを初めて見たときの感動も忘れられない。CDが本格普及し始めた時期で、その当時のプレーヤーの大半は、まだアンプと同じような横長箱形のものが多かった。ところが「P-1」「D-1」はアンプ型のキャビネットを真半分に分けたような細長い形(横幅225mm、奥行き490mm)で、斬新な印象を受けた。しかも、全体の色調が一般的なシルバーやゴールド、もしくはブラックではなく、緑がかったグレーのネクステル塗装という装いで、見た目の上品さは群を抜いていた。そして「P-1」の正面に横一文字に幅8mmほどのバーが金色に輝き、ボタンを押すとその部分がゆっくりと前方に出てくる。それがキャビネットと同じ灰緑色に塗装されたトレイで、非常にしっかりした金属の一枚板でできていた。アナログプレーヤーに比べて、著しく頼りなく、安っぽい感じの拭えないCDプレーヤーのトレイのイメージを一新する、優雅さと堅牢さを兼ね備えた一品であった。
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| ネットをつけた時と、外した場合では印象が少し違う。「MG-20」はネットを外しても美しい |
そして、ディスクをホールドするターンテーブルは、一般のプレーヤーがディスク中心部の25mmほどの大きさであるのに対して、「P-1」はディスクと同じ12cm径の、ほんのわずかテーパー状に加工された金属製で、そこにディスクが圧着される仕掛けであった。したがって、薄いCDが重量級のテーブルと一体化されることになり、ソリや偏芯が矯正され、回転の安定をもたらし、ピックアップの読み取り精度を向上させた。これが、今日では当たり前のことに思われているが、CDの音質改善に大きく貢献したのである。
デジタルだから、ディスクの回転が少々不正確でも強力なサーボでピックアップは難なく追従できるとか、信号に多少の読み取りミスがあっても、巧妙な誤り訂正回路で完全な元信号に訂正できるから問題ない、などと思われていたのである。しかし、サーボ電流が流れること、誤り訂正回路が働くことが、音質に大きく影響することは、今では多くの人が知っている。
もともとティアックはテープレコーダーの製造で鍛えられたメカニズムに強いメーカーで、メカニズムの優秀さが音質に直結していることを、肉体的に知っていたのである。デジタルでもこれがきっと効果があると確信して、初の本格的CDプレーヤーのメカに取り組んだのは、さすがというしかない。この物づくりの精神こそ、創業者谷勝馬氏から、現在のエソテリックの総帥、大間知基彰(おおまちもとあき)氏に一直線に継承されたものに違いない。
オーディオが91年以降の経済事情の影響もあって、かつての人気にかげりが見え始めた時期から今日まで、高級オーディオ機器の新製品がめっきり減少する中で、エソテリックは高級プレーヤーを中心に大いに気を吐いたが、その底力はメカニズムで培った物づくり精神の徹底によるものといっていいだろう。そして、20周年。
冒頭に述べたとおり、ティアックは早くからタンノイのスピーカーを輸入をしている。タンノイは今日ではラインナップも拡充されて、小型から大型まであらゆるタイプの製品が揃っている。その中で、エソテリックがなぜスピーカー製造に踏み切ったのだろうか、と誰もが思うのではないか、と当案内人は感じた。そこで、推測をしてみた。邪推にならないようにと祈りつつ(正確なところは後日、大間知氏に直接訊いてご報告したい)。
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| ウーファーの横にある25mm厚のチェリー無垢材サイドウッドは、ウーファーの輪郭に合わせて丁寧に丸く加工されている |
エソテリックのメイン製品は「プレーヤー」である。メカニズムの優秀さが音に直結するので、いかにもエソテリックらしい分野である。そして、その高い成果は実績で証明されている。しかし、プレーヤーは料理でいえば「素材」に相当する。ディスクに刻まれた信号を、可能な限り正確に読み取り、それをアンプを経由してスピーカーに送り込む。プレーヤーの設計者は、アンプで信号を増幅するには、信号の姿・形はこうあるべきで、そうすればスピーカーからは理想の音が得られるはずだ、と考えるだろう。そういう意味で、優れた素材がおいしい料理の原点であることと、優れた信号がいい音のオーディオの原点になることは似ている。
そこで、ここからが邪推、いや推測だが、エソテリックはいい素材を、自らの手で調理し、料理という最終製品に仕上げたいと考えたのではないか。タンノイもいいスピーカーだ、JBLもアヴァロンも…。しかし、エソテリックにいいスピーカーがラインナップされても、何の矛盾もない。むしろ、エソテリックならこう仕上げる、ということを示したい、そう考えた。エソテリック独自の技術を盛り込んでスピーカーを作り上げてみたい、そう考えたのではないか、と思うのである。
さて、それではいよいよそのスピーカーの紹介に取り掛かることにしよう。



