録音スタジオのモニタースピーカーといえば、高性能スピーカーの代名詞的存在で、オーディオファンの憧れの的だが、本来の目的が録音時の検聴用であるだけに、モデルによってはこれを一般家庭の部屋に置いても、必ずしも期待どおりの音が出るというわけでもない。ホールやライブハウスで音楽を聴くようなサウンドを自分の部屋で再現しようとするなら、モニター系のスピーカーは慎重に選ばなくてはならない。
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| ミメーシスのプレーヤーとアンプにつないでセットされた「SCM40」 |
しかし、1990年に日本に初登場したイギリスのATCというメーカーのモニタースピーカーは、モニターとしての性能の素晴らしさと同時に、これはうまく使えば家庭でも、かなりいい線のサウンドが出せるのではないか、という可能性を感じさせた。いかにもガッチリとしたキャビネットの造り、力感あふれるユニットの形状、工夫が凝らされた前面バッフルへのユニット取り付け方法などは、モニタースピーカーの装いそのものなのだが、そのサウンドをじっくりと聴いてみると、モニターらしさを維持しつつも、臨場感豊かな家庭での再現の理想に近いものがある。放射される音の輪郭はシャープだが、過度に鋭敏なことがなく、金属的な味のクセもないので、長時間聴いても聴き疲れすることがないのであった。
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| 重厚な雰囲気の「SCM40」。ユニットとその取り付けにも注目 |
このようなサウンドの秘密は一体どこにあるのだろうかと考えてみた。もちろんいろいろな要素が絡み合っているのだが、たとえばもっとも目に付く特徴は、振動板ユニットである。ウーファーはパルプ系素材で特殊なものではないが、何か特別な含浸剤が使われているのか光沢があり、仕上げも小皺がよったような加工がされている。そして、一部のモデルを除いて、センターキャップが非常に大きい。
ミッドレンジのユニットも個性的だ。今回紹介する「SCM40」には、ATCが1976年に開発し、その後何度か改良を重ね練り上げてきた、75ミリ口径のユニットが使われている。ドーム型だが写真でお分かりのように、一般的なスピーカーのものよりもとてもドームが大きい。そして、バッフルをホーン状にくり抜くように抉って取り付けられている。
この独創的な2つのユニットの性能が、ATCを家庭で使用しても満足できる再現力を発揮するのに大きな効果を上げているのではないかと思われる。高性能トゥイーターによる良く伸びて解像度の高い高音域を、ミッドとウーファーの豊かな響きが柔らかく包んで、美しい響きのホールで聴くようなしなやかさを醸し出すのである。
「SCM40」は家庭での使用を十分に考えて、ATCの実力を十分に発揮出来るように配慮された最新のモデルである。形は3ウェイのトールボーイというよく見かける形だが、キャビネットの構造からユニットの設計、その取り付けまで、あらゆるところにATCらしさが込められている。それでいて価格はペアで630,000円(税込)。実力を考えれば実にお買い得な価格となっている。
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| 部屋の音響条件をしっかりコントロールしてほしいという佐藤昌之さん |
しかしもちろん、このスピーカーを最適に鳴らすには少々工夫が必要だろう。ちょうど居合わせたレフィーノ&アネーロのゼネラルマネージャー佐藤昌之さんに聞いてみた。 「いいスピーカーであればあるほど、床にポンと置いていい音が出るというわけにはいきません。アンプとの相性も十分に検討する必要があります。当店では“これは”と思ったスピーカーは、出来るだけ多くのアンプとつないで試聴できるようにしておりますので、じっくりと検討していただけます。それから、これが大切なポイントだと思うんですが、ATCのように造りがガッチリしていて、ユニットも強力なスピーカーは、床がしっかりしていなければなりませんし、部屋の音響効果もコントロールしなくては、スピーカー本来の能力を引き出すことは出来ません。いろいろなスタンドや音響ボードなどの利用も検討されて工夫されるといいと思います。スピーカーは“部屋の音響との共同作業で初めて狙いどおりの音が出る”のですから、音響コントロールはアンプ選びと同じくらい重要です」



