スピーカーとアンプの組み合わせは、オーディオ再生においてもっとも難しい問題の一つである。しかし、この難題で試行錯誤を繰り返すことは、オーディオの楽しみの一つだともいえる。数学の定理のように、このスピーカーにはこのアンプが最適、と決まっていたら、むしろオーディオの楽しみは半減するかもしれない。
さて今回、レフィーノ&アネーロの金子さんから提示されたテーマは、「大型スピーカーを真空管アンプでドライブする」という非常に興味深く、そしてスピーカーとアンプの関係について多くの示唆に富むテーマだ。これを提示されたきっかけは、これまで2階の推奨システムコーナーに置かれていた、ウェストレイクオーディオの大型スピーカー「BBSM-15VNF」を、1階階段下スペースに移動したことだという。
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| レフィーノ&アネーロ1階階段下スペースに移動したウェストレイクオーディオの大型スピーカー「BBSM-15VNF」。現在つながれているアンプはエアータイトの真空管アンプ「ATC-1」「ATM-2」 |
2階スペースでのアンプは、スピーカーと同じ発売元(アブサートロン)が輸入しているボールダー(BOULDER)のセパレートアンプで、プリアンプは「BOULDER 1010」、パワーアンプはステレオ仕様の「BOULDER 1060」であった。(2006年11月22日掲載「2階レフィーノ推奨システムのウェストレイクオーディオのスピーカー『BBSM-15VNF』参照。そして移動の際に、この大型スピーカーを真空管アンプで鳴らしてみたい、と思ったのだという。もちろん、アンプの候補はすでに頭にあり、きっといい音がする、という自信があった。なにはともあれ、まず金子さんの話を聞くことにしよう。
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| 真空管アンプの味がよく出ている、駆動力にも問題がない。この組み合わせに自信をもつ金子さん |
アメリカ西海岸カリフォルニアのスピーカーメーカー、ウェストレイクオーディオは、もともと大型スタジオモニターシステムの開発で知られるメーカーです。これまでは、かなり駆動力のある、同じくアメリカのボールダー社の大型アンプで駆動して、みなさんにそのダイナミックな表現力をご紹介してきたのですが、今回1階階段下のスペースに移動したのを機に、真空管アンプで駆動してみることにしました。
何といっても「BBSM-15VNF」は1台で235.8kgもある超重量級スピーカーで、大きさもご覧のとおりですから、はたして非力な真空管アンプで十分に鳴らし切ることができるのだろうか、そう思われる方が多いのではないかと思います。しかしこのスピーカーの能率(出力音圧レベル)は何と「99dB」。非常に能率が高いので、それほど巨大なパワーは要求されないんですね。むしろアンプの品位がしっかり音となって出てくるタイプですから、パワーよりも“上質な駆動力”とでもいいましょうか、音楽再現力の優れたアンプと組み合わせるべきでなのです。
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| この巨体を真空管アンプがどう鳴らしてくれるかが今回のポイント |
もちろん、曲によっては無理な部分もあるかもしれませんが、たとえばピアノトリオで演奏されたジャズや、小編成のクラシックなら、このスピーカーのもつ繊細な表現力といった部分が出てくるんです。パワーのあるアンプでガンガン鳴らしたときのダイナミックで押しの強いサウンドとは、一味もふた味も違った味わいがあるんです。そうした魅力を引き出すには、上質な真空管アンプは最適じゃないかと思ったのです。
ウェストレイクオーディオは、もともとスタジオ・モニター・スピーカーのメーカーですから、このスピーカーは音楽ソースの音を忠実に再現することを使命にしているわけです。同時に組み合わせる機器の個性もわかりやすく引き出してくれるところがあって、大は小を兼ねるじゃないですが、大きいけれど小さくも語れるといった懐の深さを感じさせます。
というわけで選んだ真空管アンプは、日本のA&M社のエアータイトです。プリアンプが「ATC-1」、パワーアンプが「ATM-2」。このメーカーは、非常に信頼性の高い真空管アンプを作っておりまして、音といい、デザインといい、真空管の魅力を知り尽くしている感じがします。じっくりと丁寧に作られた1台1台のアンプは、趣味性の高い気品のある佇まいで、その完成度からするとこの価格は安いと思います。オススメの一品ですね。
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| プリアンプの「ATC-1」 |
今回の組み合わせ、私はこれでじっくりジャズを聴きたいですね。たとえば『チェット・ベイカー・シングス』。これ、納得の音です。モニタースピーカーというと、日本では優秀なスピーカーすなわちモニタースピーカーみたいな考えがありますが、それはプロが選んだという信頼性からなのでしょうか。しかし私は、モニタースピーカーは本来録音された音楽ソースに何か問題がないかどうか聴き分けるためのもので、ちょっと目的が違うのではないかと思います。
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| パワーアンプの「ATM-2」 |
音楽ソースを“しかるべき解像度と音場でありのままに”鳴らしてこそモニタースピーカーではないか、と思うんです。そういった意味では、このスピーカーは録音の良し悪しがはっきり出ますね。そしてはじめに申しましたように、組み合わせる機器の個性がよく出ます。今回の場合ですと“真空管らしさ”がよく出ていると思います。中域に温度感があって、これが『チェット・ベイカー・シングス』では、声の温かみとなって、まるで耳元で囁かれているみたいな感じがします、ちょっとくすぐったいような。それと低域のテンポ感の好さが真空管アンプらしいところじゃないかなぁと思います。この組み合わせ、本当にイケます。ぜひ一度ご来店され実際にお聴きください。お待ちしております。





