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もういちどオーディオ 案内人:船木文宏
専門店からの情報発信  
2006.8.9更新
Refino & Anhelo注目のシステム 「試聴スペースの主役をクローズアップ」43.VIVID Audioの「V1.5」を聴く
SPEAKER SYSTEM V1.5 価格 945,000円(ペア/税込)

ユニークな形は、いい音のため

「ノーチラス(Nautilus)」と聞いて、アメリカの原子力潜水艦を思い浮かべるのは、やはり団塊世代の生真面目さからだろうか。ジュール・ヴェルヌの「海底二万里」を思い出す人も多いだろう。B&Wのスピーカーはどうだろう? もし、真っ先にあの“ユニーク”を通り越して“何だこりゃ”と思わされた、B&Wのスピーカーを思い出した人がいたら、それは相当なオーディオマニアである。ここでは当然、スピーカーを思い出してほしい。確か1994年か95年の登場だったはずだが、マランツの該当ホームページの[Price List]を開くと“受注生産”とあるから、今でも入手可能だ。写真も掲載されているのでぜひご覧いただきたい。

レフィーノ&アネーロの外から見える「V1.5」。ユニークな造形には存在感がある

なぜここで「ノーチラス」なのかというと、あの前代未聞のスピーカー開発に携わったロバート・トランツ(Robert Trunz)とローレンス・ディッキー(Lawrence Dickie)の二人が、B&Wを退社して、VIVID Audio(ヴィヴィッドオーディオ)の主要メンバーとなっているからなのだ。この会社は、B.ゲスナーとP.グッテンタークの二人によって、1991年、南アフリカ共和国に設立された音響コンサルティング会社「GGA」が母体となっていて、これが2003年に「VIVID Audio」に社名を改めたものである。

正面から見た「V1.5」

B&Wではトランツが経営者の立場にあり、エンジニアのディッキーが「ノーチラス」の開発製造に当たっていた。しかしディッキーは、B&Wを退社して、ドライバーの開発から最終製品化までのすべての工程を自分が担当できるメーカーを探していて、トランツのいるVIVID Audioを選んだのだという。
 こういう経緯を知って「V1.5」を見ると、なるほどこれは「ノーチラス」の子供か孫にあたる縁続きに違いない、と思えるではないか。ラグビーボールをやや押し伸ばしたようなキャビネットのユニークさは、ディッキーならではのものだ。美術館に展示される“オブジェ”でもあるまいに、彼以外の誰がこんな“奇妙なフォルム”のスピーカーを考えつくだろうか!? 
 しかし、「ノーチラス」にくらべて「V1.5」というネーミングはかなり寂しい感じがする。この仲間に「B1」「V1」があり、それぞれ正式名は「Loudspeaker system V1.5」のようになっているだが、ずいぶん即物的ネーミングではないか。呼びやすいいい愛称があれば、人気もぐっと高まるだろうと思う。それにしても、こういうスピーカーの形は、音響技術的な着想が先なのだろうか、それとも造形の発想が先なのだろうか? 天才設計者の本心は推し量るしかないが、おそらく同時進行状態で生み出されるのではないかと思う。

「V1.5」の背面

ホームページの解説を要約すれば「ノーチラス」は、「キャビネット自体の共鳴による“色づけ”を抑え込むために、ドライブ・ユニットを取り付ける前面バッフルを極小にし、共鳴をユニットの後方に通過させ逃がしてしまう。これによりキャビネットの存在を薄めることができ、4本のドライバーが正確なピストン運動を行ない、可聴範囲全体におよぶ倍音成分をすべて再現し、シームレスな音場を描き出す」という。
 必要悪であるキャビネットが、あたかも無くなってしまったようなキャビネットが欲しい、という再生の理想を追求した結果として、あの「オウム貝キャビネット」が発想された。順序としてはそうなるが、ディッキーの頭には、かなり前から「オウム貝」の形があったはずで、それが脳内で音響の理想と、幸運な奇跡的出会いをしたのだ、と思う。ひょっとすると、ディッキーは「海底二万里」の愛読者であったのではないか、と思う。


新たなテーマを、小型2ウェイシステムで追求した、
傑作モデルの登場


メーカーの資料によると、ディッキーの新たなテーマは、次の2つだという。
(1) 音源となるスピーカー以外から音を出さない
(2) 音源であるドライバーは完全にコントロールされている

入力端子。バイワイヤリング、シングルワイヤリングの両方に対応している

(1)は「振動板以外は振動させない」という考えで、これは別に目新しい発想ではなく、多くのスピーカー設計者が理想としている。問題はこれをどういう手法によって実現するのかで、そこが注目のポイントとなる。材質の選択、形状の工夫、キャビネットの補強など、さまざまな方法があるが、ディッキーはそれらを総合した「造形発想的手法」であるところがユニークだ。つまり、従来のあらゆる形を忘れて、新たなキャビネットの造形から考え出すのである。それが、ラグビーボール、もしくは楕円星雲のような形を生んだと思われる。
 そうだ、即物的な名称だけでは可哀想なので、ラグビーボールか楕円星雲を愛称にするといいのではないだろうか。ラグビーボールでは少しスケールが小さいので、美しく雄大な再現力につながる「楕円星雲」がいい。英語だと「elliptical galaxy」。発音が難しいから単に「galaxy」でもいいかもしれない。「galaxy V1.5」なんてカッコいいではないか!!
 (2)は「振動板」の働きはすべて、設計上で決められたとおりに動作することを目指している。それは、つながれるアンプによる影響を過大に受けない、ということも含まれているであろう。スピーカー設計者にとってもっとも辛くて悲しいことは、自分の生み出した作品があらかじめ想定できないアンプにつながれたり、思いもよらない環境に置かれたりすることだ、という。そのために目指した再現性や能力が十分に発揮できないことが生みの親としては我慢がならないのだ。そういうことを極力避けるために、ドライバーを完全にコントロールすることをテーマとして掲げたのであろう。
 この2つのテーマを実現するには、「ドライバーの開発から最終製品化までのすべての工程を自分が担当」しなければならない、ということになる。しかしこれは大組織では考えらない。一定量の製品を安定した性能を守りつつに生産するには、工程の合理的分業が必要だからである。また、中小零細企業では、自社開発したり、全工程一貫生産などは到底できない。ディッキーがVIVID Audioに籍を移したのは、彼の製造の理想が可能な組織だったからなのである。

「V1.5」にはカラーバージョンが用意されている。これはコッパーレッド。好みの色も特注できる

かくして、2つの理想をコンパクトな2ウェイシステムで実現したスピーカーが、ついに完成をみたのである。VIVID Audioはいう、
「音響特性を十分に考慮した独自のフォルムのエンクロージャーに収めることにより、過渡特性に優れたカラーレーションの無いサウンド、純粋かつ微細な音の粒立ち、透明無垢なサウンドステージを得ました。基本性能に優れ、それにプラスして、ナチュラルで暖かみのある音楽を奏でる、ローレンス・ディッキーの真骨頂たるスピーカーシステムです」
と。
  なお、このスピーカーの企画はまずブックシェルフの「V1」があり、これに専用スタンドをつけたフロアスタンディング「V1.5」が生まれたものと思われる。当然ながらスタンドをつけるにあたっては、最適のチューニングが施されているわけで、両者はそれぞれの個性をもっている。
 掲げたテーマを十分に満足させる結果を得て完成した製品を見ていると、「ノーチラス」以来の一貫したディッキーのスピーカー設計哲学が、さらにはっきりと見えてくる。あの大型ノーチラスで圧倒された「不思議なほどの静寂感の中にくっきりと浮かぶ充実した音像」が、この新たな小型2ウェイ機でも、相似形で受け継がれているのである。この生き生きとスピーカーから拡散されてくる音楽の中に身を置くと、オーディオで聴く音楽の楽しみが、誰にでも心の底から納得できるのである。異常なほどの完成度の高さである。
 「galaxy」と名づけたくなるこの造形にこめられた技術の詳細については、発売元のホームページをご覧ください。

仕様
 V1.5
 型式  2ウェイ2スピーカー・フロアスタンディング
 使用ユニット  高域用:26mmメタルドーム(D26 Tweeter Driver)
 中低域用:158mmメタルコーン(C125 Mid-bass Driver)
 出力音圧レベル  89dB/W/m
 公称インピーダンス  8Ω
 クロスオーバー周波数  3kHz
 周波数帯域  40〜42kHz(-6dB)/45〜39,000 Hz(±2dB)
 高調波歪率(2nd+3rd)  0.5%以下(全周波数帯域内)
 最大入力(ミュージックパワー)  150W
 キャビネット  カーボンコンポジット・強化ポリマー樹脂製、ハイグロス塗装
 外形寸法  255(W)×1,130(H)×240(D)mm
 重量  23kg
 備考  本体カラーはオイスターグレー、グラファイト、サハラ、
 パールホワイト、コッパーレッド。特注色も可能

製品の詳細は: ステラヴォックス・ジャパン

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