7月22日、パストラルシンフォニー特別試聴会「Pastoral Symphony 7周年 メモリアル試聴会」がレフィーノ&アネーロで午前と午後の2回に分けて行なわれた。開発者、福田三恭司(ふくださくじ)さんの話も聞けるとあって、試聴会は時間を延長するほどの盛況ぶりであった。 パストラルシンフォニーの製品はまだ広く知られているわけではないが、今年1月ラスベガスで行なわれた恒例の「コンシューマー・エレクトロニクス・ショー(CES)」では、その新製品「Cz302ES“Artist”」が、オーディオ関係者の間で大変な好評を呼んだ。
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| 「Cz302ES」の魅力を語るレフィーノ&アネーロの金子さん |
まずは、レフィーノ&アネーロの金子敬二さんに、パストラルシンフォニーとその製品について紹介していただくことにしよう。
 パストラルシンフォニーは、1998年にスピーカーを中心とする音響技術開発と、高品質なハンドメイドスピーカーの設計をする「デザイン工房」として誕生しました。自社生産設備は持たず、研究開発と設計・販売に特化する会社で、生産は国内の優秀なメーカーとのパートナーシップで行なわれています。
同社は「Micropure Sound Healing Technology」という特許技術(日米中、欧州は出願中)を持っていまして、この技術をベースにすべてのスピーカーが作られています。この技術は、小型スピーカーでありながら、優れた重低音の再生能力、非常に高い解像度、ナチュラルな音質が得られるもので、弦楽器製作の手法が応用されているそうです。「マイクロピュア」というブランド名はこの技術によるものです。パストラルシンフォニーは、この技術を使って家庭用スピーカーから、PA用、スタジオモニターなどのプロ用機器まで作っておりまして、非常に高い評価を得ています。 創業者で、今回の試聴会のインストラクターを務めてくださった福田三恭司さんは、もともとヤマハ大阪電気音響部にいらした方で、舞台音響の経験を積み、海外でもエンジニアとして、さまざまなアーティストと仕事をされました。「マイクロピュア」の技術に、楽器製作の手法が応用されているのは、この経験によるものかもしれません。
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レフィーノ&アネーロ1階にセットされた「Cz302ES」
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今回の試聴会では、創業からのポリシーを熟成させた、Cz102、CR101-PB、AP103SD、そして最新作の、Cz302ESを聴くことができました。ハンドクラフトならではの、独特の味わいがある外観と、心が自然に溶け込んでいくような音質が特徴です。ぜひ、試聴会に来れなかった方々も、一度レフィーノ&アネーロで聴いてみてください。

(試聴会のシステム:プレーヤー「YBA PASSION 200 CD Player」、アンプ「LUXMAN L-590A」)

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| 「Cz102」。この小さな体から、スケールの大きい豊かな音楽が再現される |
技術的な詳細については、パストラルシンフォニーのホームページを参照していただきたいが、そのポイントを要約しておこう。
スピーカーのドライブユニットは通常、キャビネット前面のバッフルと呼ばれる板に完全に密着して取り付けられている。この場合、ユニットの振動板の振動は、バッフルに伝わり、そのバッフルの振動がユニットのエッジや振動板に伝わり、入力された信号で動作しているユニット本来の振動と干渉を起こす。これを避けるために「Micropure Sound Healing Technology」では、ユニットをポイントコンタクトでバッフルに取り付ける。点接触であるから、ユニットとバッフルにはわずかな隙間ができる。これを「レギュレータースリット」と同社は呼ぶ。本来バスレフ設計のスピーカーである「Cz302ES」は、ユニットの振動によって発生する空気は、キャビネット背後のバスレフポートからのみ出るべきだが、前面バッフルにスリットがあると問題はないのだろうか、と疑問に思われる。実はその最適なチューニングが「Micropure Sound Healing Technology」の眼目の一つなのだ。
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| 「Cz302ES」のリア。上部はバスレフポートの開口部。スピーカー端子はバナナプラグも接続できる |
この取り付け手法によってもたらされるもっとも顕著な特徴は、音の減衰特性がオリジナルの音の波形に忠実に再現されることだ。音の立ち上がり特性については、スピーカー設計では常に重要な要素であり、多くのスピーカーがその特性の向上を目指す。しかし、減衰特性について、ここまで深く検討し開発された技術は珍しい。同社は、低音の微細部分が精密に再現できることで、たとえば録音されたホールの2次、3次反射以上の残響音をリスナーが聴き取ることができるから、小型のキャビネットでも雄大な響きを表現できるようになる、という。また音が減衰して消えていく最後まで振動板がコントロールされるので、次の音楽信号にも的確に対応ができる。減衰する音楽信号の忠実な再現性の効果なのだ、という。 しかし、このような説明は読まれてもわかりにくいので、ぜひ実際の音を聴いていただきたい。
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| ピアノブラック仕上げの「CR101-PB」。ユニットは「Cz302ES」と同じだが、キャビネットが大きく、バスレフポートの開口部は前面に2個ある |
もう一点見逃せない特徴がある。それは、キャビネットの優秀さである。前面バッフルをはじめ全6面はいずれも天然木の一枚板で、手作業で組み上げられている。
「100年かけて育った木は100年以上使い込めるものにしたい」
という精神で、懇切に造られているのだ。磨きぬかれた板に薄く塗装されたキャビネットは、使い込むほどに色合いに深みを増していくであろう。弦楽器の名器が、名手から名手へと長く伝わっていくのと同じように、パストラルシンフォニーのスピーカーも長く愛用して欲しい、その気持ちが、柔らかくて明確、輝かしくて深い、その再生音にも通じているようだ。 |