CD登場によって音楽ソースの大半がデジタルとなって、いちばん大きく変わったのは、ダイナミックレンジと再生周波数帯域の拡大である。聴感上の印象はともかく、LPに比べてCDは格段にその再生の器が大きくなったのである。サンプリングをしない、無限に連続するアナログ信号を刻んだLPは、CDよりダイナミックレンジも周波数特性もずっと大きくて優れている、というのは“学術的”に正しくない。どう贔屓目に見ても、測定すればそれは明らかなのである。しかし、繰り返しになるが、聴感上の印象は別問題である。
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| ステレオ試聴室でタンノイに接続されたオクターブの真空管アンプ |
したがって、真空管アンプに愛着をもつメーカーの課題も、この変化をどう解決するかにかかっているのである。真空管はトランジスタに比べて、音楽的であるとか、実質的なエネルギー感に優れているということと、電気工学的に信号を処理する問題とは少し違っているのである。音楽が好きで、なおかつ電気技術、音響工学、オーディオ技術に明るいメーカーであれば、真摯にその事実を追究して、真空管という素子の良さを、現在の主流音源である、デジタルソースの再現に生かそうとするのだ。
ドイツのオクターブ社もそうした考えに基づいて製品作りを続けているメーカーの一つである。その現在の基本姿勢は、「最良のトランジスター技術と古典的な真空管技術の融合」という言葉に集約されている。つまり、真空管の良さを発揮させるために、トランジスタの良さを使うのである。それを具現化したのが、オクターブ社独自の電子保護回路であり、ソフトスタート技術、電源回路の安定化である。アナログであろうと、デジタルであろうと、音楽ソースを気にすることなく安心して使えて、なおかつ真空管ならではの、エネルギー感にあふれた再現力を獲得することに成功しているのだ。 |