まずは、笠取山へ登る
「行こう行こう、海まで。おいしいものがあるなら、なおさら。今日、このまますぐ行こう!」
ステューピッドみゆきは、止める間もなく自転車をこぎ走り出してしまった。
しかし、反対の方向へ。
というのが、前回までのお話。
前回、といっても5月7日更新のこのページ「むかしの道を自転車でゆるゆると走ってみる」での話である。
ようするに、僕は多摩川を源流から河口までをなんらかの方法でたどってみようか、と思ったのだが、「だいじょうぶ、だいじょうぶ。すべての道はローマに通じてるんだから」と、みゆきは上流へ向かって自転車をこいでいったのであった。
なるほど、そこにヒントがあったのか。ならばしょうがない。つぎの多摩川散策大作戦は源流行と決めた。
徹頭徹尾、不・終始一貫である。適当適宜で、優柔不断でもある。天衣無縫にして、天空海闊。初志貫徹・希望! というわけである。
某日早朝。
笠取山(1953メートル)のトレイル・ヘッドである作場平口へ。
この笠取山の直下に、多摩川の源流の水干(みずひ)と呼ばれる場所があるのだ。
作場平口は標高1310メートル。650メートルほどの標高差を登ることになる。
気持ちが落ちつく森のなかを歩きはじめる。渓流の音が耳に清楚だ。
しかし、暑い!
作場平口から笠取山への登山道は、サンダルでも歩けるほど整備された道が続く。もしかしたら、ハイヒールでも歩けるかもしれない(ハイヒールを履いたことがないから、なんともいえないが……)。
そんな登山道などあるはずがない、と思う人は、明日にでもサンダルかハイヒールでここを歩いてみるといい。いくら整備されていても、サンダルやハイヒールは登山道には向かない、ということが5分もすればわかるだろう。話をちょっと大げさに書いただけだ。
すまん。すまん。
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というわけで、僕はトレッキング・シューズを履いて歩いている(あたりまえのことながら)。
ダナーのマウンテン・ライトという革製のベーシックなブーツだ。長年履いているので、くたくたよれよれである(「おまえのほうが、くたくたよれよれだろ」と、ブーツが文句をいいそうだけど)。
いずれにしても、歩きやすい道が続くのだ。みゆきは、スニーカーで走りまわっている。
しかし、いくら整備されてはいても、標高差はおまけしてくれない。そして気温の高さや風のなさも、やっぱりカバーはしてくれない。
途中、川を渡るたびに頭から水を浴び、なんとか歩き続けるのだった。なんたって、晴天だったのだ。
4時間近くの歩きで、笠取山山頂のすぐ下へ。
源流の水干へは笠取山山頂を経由しなくても行くことができる。山頂へはここから30分ほどの急な登り、となる。
さて、急斜面を登ってピークを越えていくか、このまま山頂を踏まず楽に水干を目指すか。
山を歩くのは好きだが、僕はピーク・ハンターではない。というわけで、……。
と思ったが、やっぱりここはピークを目指すことにした。
照れもあるのか、登れなかったときのいいわけなのか、「ピーク・ハンターじゃないから」といういいかたをする人が多い。先にも書いたが、僕もその傾向がある。
でも、人はピークを前にすると、そこへ行ってみたいと思う生きものなのだ。達成したところでたいした意味がないことでも、目標や目標点があると、やっぱりそれを成しとげたいもんなのだ。
ピークを踏むことに実質的な意味や価値はないのかもしれないが、人間としての大いなる意義があるのかもしれない。
そんなふうに思う、最近である。
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