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第六十六話

7月17日更新
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第9回『サバニ帆漕レース』 琉球文化継承の担い手たちの夏

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クリーンなエネルギーは熱かった

朝、8時。号砲と同時にレースがスタートした。
気温が一気に5度ほど上がったかと思わせるスタート・ダッシュの熱さである。
全艇のクルーが猛烈に漕ぎだし、帆にかーちべー(夏至南風)を受ける。
かーちべーとは、梅雨明けの沖縄に吹く安定した南西の風だ。この風を使って、古代の人たちも島から島へと移動した。
ここ座間味島では、島で穫れたスイカを満載にしたサバニがこの風に乗って本島へ向かった、といわれている。
それが今日は、伝統の舟を思う熱い心とそれを操るプライドをいっぱい積んだサバニが、東へ向かって疾走していくのだ。

スタートしてから、約1時間。それぞれのサバニにそれなりの差がつき、海上はちょっと落ちついてきた。
参加チームの顔はさまざまだ。サバニ好きが集まりそれぞれのチームを形成している。
優勝ねらいのチーム、完走を目的として航海を楽しんでいるチーム、女性だけのクルーのチーム、地元中学生だけで作ったチームなどなど。
そして、今回は新設された「古式」部門のチームもある。
レースに出場するサバニの多くはアウトリガーとラダー(舵)をつけることで、安定性と操作性を高めている。それらを取っぱらったのが古式部門である。古式というより、これが本来のサバニなのだ。
じつは僕も以前に、アウトリガーなしのサバニを漕いだことがある。
乗りこむと同時に、「やばい!」と心が叫ぶほどに不安定なのだ。このぐらぐら感は、フリーランスのライター業以上かもしれない。
琉球の先人たちは、こんな舟に乗って大海原に出るほど命知らずだったのか、とびっくりするほどなのである。
そんな舟でレースに出場する現代うみんちゅー(海人)たちもいるのだ。

号砲とともに全艇がスタート・ダッシュ。だれもが1位を夢見る瞬間だ
サバニは舟の形もそれぞれ違うが、帆の形にも個性が強い。遠くから見ても、どの舟かがわかるほどだ
地元の中学生で編成されたチーム「海学校」。完走32チーム中、16位と健闘
今回、行動をともにさせてもらった「海想」チーム。堂々の2位でゴール

先頭の舟が、約3時間ほどでゴールへ。5分の差でつぎの舟が。さらに10分遅れで数艇がゴールへと迫ってくる。そして、そのうしろからも、かーちべーをこれでもかというぐらい帆にはらんだサバニがつづく。
クルーたちがエークを漕ぐ姿は、琉球文化を過去から未来へ継承するための意思表示のようだ。手を伸ばして力強く過去を引きよせ、サバニとともに未来へと進んでいく。
その動きは、おれたちがこの文化の継承をになっているんだ、という声にも聞こえる。

こうして、暑い夏の1日が終わった。いや、熱い1日だった。
サバニを漕いでいる人たちはもちろん、見ている人にとっても熱いレースだったのだ。
風力と人力というクリーンなエネルギーを使えば使うほど、人は熱くなるのかもしれない。
このレースが終わった数日後、僕は友人たちと風に吹かれる旅へ出る計画だ。サバニにキャンプ道具を放り込んで、島から島からへの風まかせの旅だ。
なんたって、サバニは僕にとっての自由への切符なのだから。

那覇が近づいてきた。ゴールは間近だ
1位「ざまみ丸」(オレンジ)と2位「海想」(えんじ)のクルーたち。表彰式のあとで仲よく記念撮影
2位の入賞カップでビールを! 行動をともにさせてもらったおかげで、僕もまた勝利の美酒を味わった
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