夜明けの砂浜に伝統舟が勢ぞろい
2008年6月29日、日曜日。早朝。沖縄県慶良間列島座間味島。
今日も水平線から垂直に飛びだした太陽が強烈である。悪意を感じるほどに。
またも酷暑の一日がはじまる、という警告をセミたちがざらついた声で告げている。温められた海水は早々と蒸気となって立ちのぼり、水平線の遠い景色を隠してしまう。
座間味島・古座間味の浜には、40艇近いサバニが並んでいる。それぞれがはっきりとした別個の個性を持つサバニが、今年で9回目を迎える『サバニ帆漕レース』の出走を待っているのだ
サバニとは、琉球諸島の生活を支えてきた伝統的な舟のことだ。何百年も前から、南の島の人々は、シンプルにして気品あるデザインのこの舟に乗り、エーク(櫂)を操り、漕ぎ、舵を取り、帆で風をとらえ、漁をし、航海をしてきた。
舟のスタイルは、1対6の比率をもつほど細長い。温暖な地域ならではの転覆を怖がらないデザインだ。実際、嵐のときなどは、わざと舟をひっくり返し、転覆した舟につかまりながら荒天がとおりすぎるのを待った、といわれている。
ここ座間味では、南の海に生まれ、島の文化として育まれてきたそうした舟を使ってのレースが、毎夏おこなわれている。
レースのコースは、古座間味のビーチから那覇港沖までの約35キロ。大まかなコース設定はあるものの、ほとんどがその日の風や潮流を読んで参加者が航路を考える、というレースである。レースと呼ぶよりは、航海という言葉が似合いそうだ。
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「1999年にヨット仲間が集まったとき、サバニのレースをやろう、と話をしたんですよ。するとすぐに、やろうやろう、と声が上がって、実現に向かっていったのです」と、このレースのいいだしっぺのひとりであり、実行委員のひとりである真久田正さん。
それからは、実行委員会の人たちの実現へ向けてのがんばりがあり、いろんなことが決まっていったという。
もちろん一筋縄ではいかない難関もあったが、なんとか2000年に第1回大会へと漕ぎつけた。
「僕らは子どものころに実際のサバニを見ている。サバニは、身近な存在なんです。サバニは帆かけでも走る。漕いでも進む。担げば陸上だって移動できるんです。これほど琉球の島々の移動に向いた舟はないです」
レースの名が『帆走』ではなく『帆漕』と名づけられているのが、サバニという舟の性格をよく表している。
9回目の今回、エントリーは37艇。
レースがはじめられたばかりのころは、出場したサバニのほとんどが現役を引退した古ぼけた舟を修理、改造し、現代へよみがえらせたものだった(ちなみに、第1回の参加は15艇)。
ところが、レースを重ねるごとに、新造サバニが登場してきた。
新造といっても、新しいテクノロジーが搭載されているわけではない。昔ながらの造り方で生まれてきた、柔らかいテクノロジーを持つ舟だ。
そんなわけで、舟大工がサバニ建造を再開しはじめた。消えかけたサバニ作りの伝統もまた、細くではあるが引き継がれていく要因にもなったレースなのだ。
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