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第四十二話 7月18日更新
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紀伊の清流・古座川でとことん遊ぶ・3 旅の最後は、源流部を歩いてみる
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これこそが“清流”と呼びたくなるのが古座川である。
一週間の滞在で、僕が思ったことは、そんなあたりまえのことだった。
川沿いに住む人たちは、みんな川のほうを向いて暮らしているのだ。そして、天気のあいさつをするがごとく、川の話題があいさつとなる。
水が少ないとか、鮎がのぼりはじめたとか、今年は鮎が小さいとか……。
この川を守ろうなどと肩肘を張っているのではなく、だれもが、ただただ古座川が好きなのだ。だから、まるで家族の一員のように川を見ている。
そんなことを教えてくれたひとりが、古座駅前に住む、小山正博さんだ。10年ほど前、はじめて古座川を訪れたときからのつき合いだ。
小山さんは駅前のガソリンスタンドを経営している。油を売るのが仕事なのだ。
というわけで、ずる休みをして川で遊んでいた僕が、やはり川で油を売っていた小山さんと出会ったのは、必然だったのだのだろう。きっと。
小山さんのカスタムナイフ工房探訪
 
「今日は一日中雨やから、うちでのんびりしていったらええ」
雨の朝、小山さんは、僕たちを家に呼んでくれ、そんなふうにいったのだ。
僕たちというのは、紀伊和歌山をいっしょにうろついている、島根のみっちゃん(天野光豊)と犬のベルーガ、それに僕である。
僕は、小山さんのその言葉に、素直にしたがうことにした。素直さが取り柄なのだ。
古座川の源流部を歩いてみよう、と思っていたのだが、それは明日にしよう。
 
これぞ、男の隠れ家である。暇なときは一日中ここにこもっているという小山さん。その気持ちがよくわかる部屋であるで、さっそくナイフ工房を覗いてみる。
小山さんは、カスタムナイフ作りの名人なのである。ガソリンスタンドの2階の小さな部屋は、小山さんの隠れ家で、ナイフ作りのための材料や道具や工具、それに作りかけのナイフなどなどが、ひっちゃかめっちゃかに散らかっているのだ。
まさに、男の隠れ家である。
散らかった狭い部屋、というのは、どうしてこんなに落ち着くのだろう。これは、僕の場合だけだろうか。今度、統計を取ってみたいものだ。
小山さんのナイフ作りは、本人は趣味だというが、そのナイフを見せてもらい、実際に使ってみると、確実にプロの道具なのである。
じつは、最初に知り合ったとき、1本のカスタムナイフをもらったのだ。以来、僕はそれをずっと使っている。
よけいな飾りはなく、これみよがしの嫌味さがない。質実で、剛健で、そしてやさしさが同居している。そんなナイフなのだ。
小山さんのナイフは、JR古座駅内の古座観光協会(※1)に展示されているので、旅のスパイスに覗いていってください。ぜひ。
ナイフ作りのために必要なものが、ここにはすべてそろっている。これらは、日々の生活でもつれてしまった中枢神経をほどくための道具でもある
RIVER KOZAと刻印された小山さんの作品の数々。これらのナイフもまた、清流・古座川があったから生まれてきたものなのだ
昼からは、小山さんのレコードコレクションを聴いたり、ギターを弾いたりしながら、ビールを飲んで過ごすことにした。
先日、大阪でおこなわれたエイモス・ギャレットのライブを聴きにいったという小山さんの音楽の趣味が、なぜか僕とかなり近い。まるで、自分のレコード棚を見ているようなのだ。
ふたりとも、どこか偏っているのだ。だからふだんは、あまり音楽の話題で、人と盛り上がることは多くない。が、今日はとことんの一日なのだ。
ロバート・ジョンソンやザ・バンド、デビッド・ブロムバーグ、ライ・クーダー、デビッド・リンドレー、J.J.ケール、ジェシー・ウィンチェスター、ミシシッピー・ジョン・ハートなどなどの話をしながら、つぎつぎと小山さんコレクションを聴く。
僕は僕で、自分のiPodに入っているボブ・ディランがうたう秘蔵の『ザ・ウエイト』を、自慢げに小山さんに披露する。
和歌山の小さな街で、そんな幸せな1日が、けだるい音楽とともにゆっくり過ぎていったのだった。
 
雨の一日を、小山さん宅ですっかりくつろいで過ごした、わたくしとベルーガである。ありがとう
 
(※1)『古座観光協会』http://kokoza.com/
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