おとなのたまり場 > もういちどBE-PAL > 堀田貴之のおとなのずる休み
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第四十一話 7月4日更新
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紀伊の清流・古座川でとことん遊ぶ・2 海賊の島で、一日を過ごしてみれば
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古座川の河口までのカヌー旅が終わったので(前回更新“第四十話”)、その勢いで海へ出ることにした。海賊が隠れ家としている島がある、と聞いたのだ。
カヌーでそっと近づけば、海賊にも見つからず上陸できるだろう。
海賊の隠れ家である。もちろん、名前もないし、地図にも載っていない(はずだ)。
行くしかあるまい。
生きて帰った者がいない海賊の島へ向かう
出発前に、河口の町をぶらついてみる。海賊の島へわたるのだ。もうこの地へは戻ってこられないかも、という思いで……
古座川下りを終えたつぎの朝、島根のみっちゃん(天野光豊)と犬のベルーガと僕は、海賊の島へ向かってカヌーを漕ぎだした。
シーカヤックではなく、オープンデッキのカヌーで行くことにした。日本では、カナディアンカヌー、と呼ばれているカヌーだ。カナダやアメリカでは、だれもそんなふうには呼んではいなかった。ただ単にカヌー、あるいは、オープンデッキ・カヌーと呼んでいた(とすれば、カナディアンカヌーとは、いったいだれがいいだしたのだろうか……)。
海が荒れたり、風が強いと、カヌーで海をいくのはしんどいが、今日の天気ならだいじょうぶだろう。
この穏やかさは今日一日持つはずだ、というあてにならない僕の予測のもと、カヌーを漕ぎだしたのだ。
出発地点は、河口近くの橋の下だ。
汽水域のこのあたりには、多くのボラが泳いでいる。
ベルーガは、ボラにまったく興味を示さない。カヌーに乗ることにも。海にも無人島にも無関心だ。なにもしたくないんだおれは、もう歳なんだし放っておいてくれ、という感じである。
だからといって、橋の下に放っておくわけにもいかない。
ま、そういわずに今日もいっしょに行こうや、となったのだ。
川をあとにして海へ出ると、ゆったりとしたうねりがやってきた。海にも無人島にもカヌーにも、いっさいの興味を示さないベルーガである
海賊島までは、カヌーを漕いでどれくらいかかるのだろうか。すぐに着くのか。丸1日かかるのか。それとも、1週間とか、1か月とかかかるのか……。
いままで多くの船乗りたちがその島へとわたったが、生きて帰ってきた者はひとりもいない。なんたって海賊の島である。
と、このままの勢いで物語を書き進めたいところだが、さっさと白状してしまうと、その島は古座川の河口から南へ1キロ。名前は九龍島。『くろしま』と読む。
海賊が隠れ家としている島、ではなく、海賊が隠れ家としていた島、である。
ここは、戦乱の時代に、熊野水軍が拠点としていた島らしい。いまは無人島である。
わずか1キロである。風さえなければ、カヌーでも20分もあればわたってしまえる。
河口から海へ出るときは、緊張するものである。たいてい、海との境目は、底が浅く波が立ったり、流れが複雑だったりするからだ。
が、古座川は、河口内にも船着き場(港)があり、川の出入り口にはある程度の水深があり、波は立っていない。
風は、南東から吹いている。風速は、4〜5メートルぐらいか。行きは向かい風だが、帰りには追い風となるだろう。
じゅうぶんに風を感じるが、顔をしかめるほどではない、という風の強さだ。
川から海へ漕ぎ出ると、そこに明確な線があるわけではないが、ゆったりとしたうねりが規則正しく順番にやってくることで、その一線を越えたことがわかった。
海へ出たら、トビがわれわれを狙うかのように上空を舞っていた。不吉な予感……
海へ出たら、トビがわれわれを狙うかのように上空を舞っていた。不吉な予感…… と思ったら、羽根が1枚落ちてきた。ラッキー!
九龍島のすぐ前で素潜り漁をしているおじさんがいた。アワビ漁だという。
島のまわりは、サザエ、アワビ、トコブシ、それに伊勢エビの漁場なのだ。それに、釣り師にも人気のある場所だ。
沖を豊かな黒潮が流れ、大量の清流が古座川から流れだしてくる。それらがぶつかり合うこのあたりの自然は、奥が深いのだ。
アワビは大好物である。ここはひとつ、海賊に扮してアワビを横取りするか、と思ったが、しかし、アイパッチを持っていないし、肩にオウムがとまっていないし、ラム酒もないし、手が鉤状にもなってない。Tシャツにライフベスト姿では、どう見ても海賊には見えないだろう。それになにより、アワビ獲りのおじさんのほうが、はるかに強そうだ。
「お前らも潜って獲ればええ。いっぱいおるぞ」と、おじさんは屈託がない。
水中めがねとシュノーケルを持ってくるのだった……。
でも、実際のところは、水中めがねがあっても潜らなかっただろうな。アワビを捕るのは御法度だから、などと理由をつけて。
なんたって、まだ水が冷たいし、今日は気温もそれほど高くない(これは、6月はじめのことだ)。それに、僕のような素人が簡単に見つけられるとは思えない。
ま、そんなことはともかく、まずは、無事上陸である。
島の北側には上陸に適した砂浜が。あの奥の岩場の洞窟に、海賊が隠れているのである
トビにも海賊にも襲われることなく、上陸に成功である。まずは、島の探検に出かけようではないか
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