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第四十話 6月20日更新
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紀伊の清流・古座川でとことん遊ぶ・1 これぞカヌーイスト垂涎の川である
<1>
和歌山県の古座川を訪れるのは3回目だ。はじめてきたのは、あれは忘れもしない……。
あれは……、いつだったかな?
ま、そんなことはどうでもいい。とにかく3回目なのだ。たぶん……。
あれ、だんだん自信がなくなってきた。4回目かもしれない……。
いや。回数なんてどうでもいいのだ。
一度見たら忘れない清流の川なのである、ここは。
そして、いつ見ても同じようにきれいな水が流れているから、何度目かを忘れてしまうのだ。きっとそうだ。
犬と川を下ると疲れるのだ
今日も、古座川は元気だ。
橋の上から川をのぞき込むと、水がないのか、と思ってしまうほどの透明度である。
まるで、わが心を見ているようだ。
ここにあるのは、古きよき日本の川である。だれもが心に持っているふるさとの川だ。透明な水、広い河原、白い石、泳ぐ魚。
この流れを見て、よだれをあふれさせないカヌー好きはいないはずだ。さっそくカヌーで下ってみることにした。
出発点を、支流の三尾川(みとがわ)からとした。本流(古座川)から500メートルほどさかのぼったところだ。
三尾川の水は、頭からかぶってみたいほど透明だ。が、ぜったいにかぶりたくないほど冷たい。どうすればいいのだ?
目の前の深い淵は海のようなブルーで、魚がいっぱい泳いでる。ここは、地元の小学校の水泳場だという。夏には、子どもたちが河童のように泳いでいるのだ。
ここから河口の町までは、約20キロ。出発が昼近くになってしまったけど、だいじょうぶ、夕方までには着くだろう。
考えてみたら、前に来たことがあるから、と地図も持たずに川下りだ。ま、下流へさえ漕ぎすすめば、迷子になることはないだろう。ナイル川やアマゾン川のように、河口付近が幅数キロもありいくつにも枝分かれしている、という川でない。古座川は、日本の正しい川なのである。
地図を持たずに川下りというのは、けっしておすすめはできないが、これもまた日本の川ならではの気楽さである。よい子はまねをしないでください、という川下りだ。
もっとも、ここを読んでいる人に“よい子”はいないだろうから……。
どうだ、この水の美しさは。ついつい川底ばかりを覗いてしまい、船酔いしそうになってしまったではないか……
古座川はカヌーの川である。JR古座駅内にある古座観光協会(※1)でカヌーを借りて、キャリアつきのタクシーで上流へ。そんな川下り旅ができる
今回の川下りは、島根県江の川流域に住む古い友人みっちゃん(天野光豊)と犬のベルーガが、いっしょだ。
ほんとうの名前はベルなんとか、なんだけど白い柴犬だから、僕が勝手にベルーガ(シロイルカ)と呼ぶことにした。犬は、名前のことなど、ぜんぜん気にしていない様子だ。だれがどう呼ぼうと、知らん顔である。その態度には、人間になんかなびくものか、という潔さを感じる。僕も、そうありたいものだ。
このあたりでは、ベルーガを連れていると、だれもが「紀州犬か?」と聞いてくる。いわれてみると、似ていなくもない。もっとも、犬のことはほとんど知らないけど……。
さて、問題です。カヌーに乗っている2人と1頭のうち、だれがいちばん真剣に瀬の流れを見て、カヌーが下るべきコースを判断しているでしょうか?
子どものころはずっと犬(雑種)を飼っていて、犬が大好きだった。が、最近はひねくれてしまい、犬のことは変わらず好きなんだけど、犬を飼っている人間がきらいになってしまったのだ。
と書くと、犬好きの人からすごく誤解を生みそうだけど、ま、いいや。
「ほらベルーガ、きれいな水だろ。ここなら安心して飲めるぞ」とか、「つぎの瀬は波が高いから身を低く構えて足を踏んばるんだ」とか、「よくやったぞ、よくがんばったな。よしよし。さすがベルーガだな。ご褒美をあげよう」などと犬に話しかける自分がいやなのだ。そんな自分がきらいだから、犬を飼わないのだ。
それに、犬を連れていると、それだけで動物好きの好人間、という雰囲気になってしまうのもいやだ。人間サイドの都合だけで、陰では「いい加減にしろ!」などとこづいたりしているのに。
さらには、犬を擬人化して、人に話したり、書いたりする自分もいやだ。
が、なんのことはない、僕は、いっしょにカヌーに乗るベルーガに、「よしつぎの瀬をいっしょに乗り越えたら、今夜は、でっかい肉を買ってやるからな」と褒めそやしたり、「カヌーのなかでうろちょろするな。バランスをくずすじゃないか」とこづいたりしながら、古座川を下ったのだった。
だから、犬といっしょはいやなんだ。
「おれには味気ないドッグフードだけなのに、どうして、お前たちはそんなうまそうなもんを食ってるんだ?」と書きたいところだけど、犬がそんなことをいうわけがない
(※1)『古座観光協会』 http://kokoza.com/
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