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もういちど自転車自転車達人マニュアル
山本修二の自転車日記 ママチャリだっていいじゃない。自転車に乗って坂を下れば、ほら気分爽快。ペダルを踏んで前へ前へ。気持ちだけは少年に。自転車に乗って、ジンセイゆるりと楽しみませんか?
第八話 3月7日更新
ちょいとミネアポリスへ マイナス28度のサイクリングを初体験
以前から気になっていたアメリカの『サーリー』という自転車ブランド。突然、この本社を取材できるチャンスを得た。場所は、ミネソタ州ミネアポリス。調べるうちに、アメリカ北中部、五大湖の西側に位置するこの都市が極寒の地であることを知った。時すでに遅し、エアーチケットの予約は済んでいた。

なにせ昨年の転居の際に、もう着ないだろうと、エクスペディション・ウェアをすべて処分してしまった。ゴアテックスのマウンテンパーカと、ちょっと古いフリースをスーツケースに押し込んで飛行機に乗った。この装備じゃ北海道でも寒いだろう……。
橋の上からみた川は、端が凍っていた。この日の外気温はマイナス28度Cだった
空港から迎えの車に乗るまでは「それほど寒くない」と感じた。このときマイナス11度C。サーリーが属す『QBP』というアメリカ最大のスポーツ自転車専門卸問屋の本社に向かった。サーリーは、この会社が築いた自社ブランド。近代的な社屋には、倉庫とオフィスがあり、約300名のスタッフが働いている。驚いたのは、自転車通勤する人の多さ。オフィス内には、彼らの泥にまみれた自転車が何台も置いてあった。
サーリーとサルサというブランドの開発スタッフと一緒に走った
前を行くのは自転車に乗った瞬間、顔に笑みが浮かぶMTBレーサーの深谷幸彦選手。
翌朝、9時30分本社集合。ありったけの防寒具を身につけ出向いた。今回は、MTBクロスカントリーレースの現役選手で、チームMX/ストーク所属の深谷幸彦選手も日本から一緒に参加。彼は、アドバイザーを務める会社の仕入れのためにやってきた。集まったメンバーは10名。サーリーの開発スタッフと、もうひとつのオリジナル・ブランド『サルサ』の開発スタッフも顔をそろえた。

「今日は、ミネアポリスでも珍しい寒さだ。マイナス28度Cなんて、年に1、2日しか経験できないよ。普通は走らないんだが……」
ひとりのスタッフが、そう話した。われわれに用意された自転車は、サーリーの『パグズレイ』というモデル。幅3.7インチ(約10センチ)の極太タイヤを装着した本物の冒険自転車。この太いタイヤだから、普通のMTBでは走れない荒地や雪の上でも走れるという。今回の最大の目的は、この自転車を極寒の地で試乗することにあった。

本社をあとにし、舗装路を走る。タイヤの太さは思いのほか感じない。ダウンヒル用のMTBより、はるかにペダリングが軽い。ハンドリングは鈍いが、十分街乗りで使えそうなレベル。それに空気圧を低くしているため、乗り心地がふわふわでサスペンションがなくても気持ちいいのだ。ところが、楽しく乗っていたのも最初の数分だけ。指先から凍ってくるような気がした。さらに心臓めがけ、徐々に凍ってくるような感覚に襲われた。同時に鼻まで覆ったネックウォーマーを通して吐く息の水分でメガネが一瞬にして凍った。視界を確保するためネックウォーマーを外すと、空気が冷たすぎて呼吸がまともにできない。心拍が乱れ、まともにペダリングができなくなる。
なんとか最初の休憩地点でみなに合流できた。
「このままだと凍傷になるから」と予備のグローブをだれかが貸してくれた。サポートカーの暖房で、凍りついた腕を解凍。その後、寒さに集中力を失いながらも、凍った川の横を通るトレイルを進んだ。このエリアは、寒いものの雪は少ないらしい。おおむね地面に雪はないが、ところどころアイスバーンが出現する。凍ったカーブでは、ツルッとタイヤが滑るのだが、その次の瞬間にタイヤの逆サイドが地面をつかんでいる。この極太タイヤは、丁度MTBタイヤを2本並べたような走り心地。一度滑っても、残りの部分が接地し、完全にグリップを失うことがまずなかった。素晴らしい。

1時間ほどトレイルを走った。
「楽しいっすね。この太いタイヤで、こんなに軽々走れるとは思いませんでした」と深谷選手。彼は、翌日の夜に行なわれた、この自転車を使ったレースでも、ぶっちぎりのスピードをみせつけ地元の人々の喝采を浴びていた。
帽子もネックウォーマーもメガネも凍った。もちろん皮膚も凍ってました
ボクはといえば、指先と耳が軽い凍傷に。肺を守るか、皮膚を守るか。そんな選択を考えながら自転車に乗ったのは初めての体験だった。その後、この会社の人々のインタビュー取材を終え、最後の夜にはサーリー・スタッフ行きつけのバーで共に飲んだ。
極寒の地で、自転車に乗り新しい製品を開発する彼らは、驚くほど陽気でやさしい人達だった。彼らと飲んだ黒ビールの苦味を思い出すと、今もポッと心が温まる。
アンディの自転車の前輪ハブには、ギアがついていた。聞けば後輪のギアの内部に水が入りそれが凍って動かなくなったときに、この前輪と交換するそうだ。 サーリーのパグズレイは、日本でも買える。フレーム価格が9万1350円。タイヤや変速機などをつけると20万円前後になる。問い合わせはモトクロスインターナショナル TEL052-773-0256まで サーリーのアンディは、毎日自転車で通勤している。手袋は二重にし、ウェアもノースフェイスなど、本格的な防寒着を選び抜いていた
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