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もういちど自転車自転車達人マニュアル
山本修二の自転車日記 ママチャリだっていいじゃない。自転車に乗って坂を下れば、ほら気分爽快。ペダルを踏んで前へ前へ。気持ちだけは少年に。自転車に乗って、ジンセイゆるりと楽しみませんか?
第一話 11月1日更新
ちょっとサイクリングロードへ 過密都市に残された最後の自転車オアシスを行く
ホームグラウンドは東京と神奈川の境を行く多摩川サイクリングロード。時間があればロードバイクに乗って60kmぐらいの距離を3時間かけて、ちょい早で楽しんでいる。信号に脚を止めさせられることもなければ、大型トラックに警笛を鳴らされることもない。春にはヒバリの声を聞き、冬には渡り鳥を眺めて走る。ときには立ち止まり、少年野球の試合を観たり、ベンチに腰掛けおにぎりを食べたりする。川原のサイクリングロードは、自転車に乗る者にとって最後に残された楽園なのかもしれない。でもたったひとつだけ欠点がある。同じコースを何度も走ると少々飽きてくるのだ。

10月の下旬。とある自転車輸入メーカーから、新車の案内をいただいた。この自転車のターゲットは50歳以上のリッチな男性。少年時代に自転車を楽しんでいたが、いつしか乗らなくなった。そんな人にもう一度、乗ってもらうための自転車なんだとか。
地図
ドイツで生まれて10年ちょっと。フレームは、『BD-1』という折り畳み自転車で知られる『r&m』という会社がデザイン。これに日本の『シマノ』が開発した『Di2』というコンポーネント(パーツ群)を搭載。サスペンションの硬さと、ギア変速をオートマチックでコントロールする。乗ってペダルを踏むだけで、ややこしい24段ものギアチェンジを自転車が勝手にやってくれるのだ。しかも、この変速機の動力は自転車を漕いだときに自己発電しているというからすごい。
荒川サイクリングロードまで遠征。つくばエクスプレス高架近くからスタート そんな新型車のテストライドを兼ねて、東京東部、荒川沿いのサイクリングロードを走った。出発地点は、小菅という町。荒川に沿って首都高速中央環状線がそびえる。対岸には北千住の高層住宅を望む。つくばエクスプレスの高架下からスタート。15kmも走れば東京湾。まずは海を目指して走ることにした。

いつも走っている多摩川のサイクリングロードより道幅が広く、場所によっては自動車道の2車線ほどもの幅がある。だからペースもちょっと速め。メーター表示で時速20kmぐらい。風を感じ景色を眺めるには、このぐらいが丁度いい。

ランニングをする女子中学生、釣りをしているおじさん、犬を散歩させているおばちゃんと、平凡だけど平和な風景が心地いい。野球場のベンチに座ったり、木陰で川をボーッと眺めたり、居心地のいい場所をみつけるたびに休憩し写真を撮った。
立ち止まり、カメラを通して景色を深く観察することで、その場の空気を長く感じることができる。川の中を泳ぐ魚や、小さな木の実など、いくらスローな自転車といっても、走ったままでは見逃してしまうような、今の瞬間、この場にある自然の恵みや光を深く自分のなかに取り込むのだ。そんなちっちゃな出会いを重ねることこそ、サイクリングを楽しむコツとボクは信じている。
野球場にてひと休み。スコアボードのメッセージを書いたのは、どんな人なのか 木陰に座りボーっと川を眺めて、ゆるい風と時の経過が心地いい 海まで続くサイクリングロード。いつかまた来たい道 「すごい自転車だなあ。何段なんだい」と話しかけてきたおじさん。若いときには生活に欠かせない道具として自転車に親しんできたそうだ
海まであと何キロかな? と思い、四つ木橋で地図を開いた。するとすぐ近くにお花茶屋という駅があることに気づいた。その町には、5月に知り合ったものの顔をだせずにいた自転車屋さんがある。お腹もすいてきたし、サイクリングロードを外れて寄り道することにした。

下町情緒を感じさせるお花茶屋の商店街。肉屋さんを覗くと、元気な奥さんが笑顔で「うちのメンチカツは最高よ!」とすすめてくれた。シャキシャキのタマネギとちょっとさっぱりしたひき肉が、サクッとした衣に包まれ、口の中に甘く広がる。1個105円のメンチカツは、ホクホクと心の中までハッピーにしてくれた。あまりの美味さに、コロッケ、肉まんと買い食いを続けランチタイムを肉屋さんの店頭で終えた。

その後、自転車屋さんで油を売り、再びサイクリングロード方面へと走る。今度は、幹線道を外れ、わざわざ路地裏を選んで走ってみた。するとシュールな中華屋さん、トタンでできた家、日向ぼっこする猫など、いつしか近所で見かけなくなった昭和の町のイメージが次々に目に飛び込んできた。ほんの十数キロしか自宅から離れていない場所で、こんなにも町の表情が違うことが新鮮だった。
メンチカツが美味しいお花茶屋のお肉屋さん『丸正』※1 で買い食い。恥ずかしくもなく少年気分になれるのも自転車と一緒だから じつは、折り畳み自転車界のカリスマショップ『サイクルハウスしぶや』※2 いろいろなチューニングを施し、走りと見た目をグレードアップしてくれる心強い店 路地裏でみかけたラーメン屋さん。表情豊かな下町は、どこを走っても優秀な自転車コースになりうる
寄り道をしすぎたためか、出発から5時間を経ていた。海を目指すのはあきらめ、サイクリングロードを使って自転車を借りた会社へと引き返した。走行距離は14km。使ったお金は620円。体を動かした充実感と、新しい風景や人との出会いで、ちっぽけな旅は充実感を満タンにしてくれた。

自転車はなんでもいい。まずはサイクリングロードへ。好奇心をもって走れば、そこから自転車生活の楽しみが広がります。きっと!

※1 お肉屋さん『丸正』。葛飾区お花茶屋1−12−8。日曜定休。
※2 『サイクルハウスしぶや』 http://www.cycleshibuya.com/
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